平成30年度に行った研究において、野生型マウスでは骨修復速度に性差があることが判明し、雄と雌の骨修復部を比較したところ、雄に比べて雌の方が骨修復が早く起こる現象を確認した。また、トリプル一酸化窒素合成酵素 (NOS) 遺伝子欠損マウスには野生型マウスのような性差はないことも同時に確認した。令和元年度の検証で、野生型マウスにおける骨修復過程には性ホルモン、特に、エストラジオール(E2)が強く関連していることを明らかにした。令和2年度は、骨修復に与える E2 のアナボリックな作用が NO を介した作用であることを明らかにするための検証を行った。 雄と雌の野生型マウス10週齢に対し、ドリルを用いて大腿骨骨幹部前面に直径 1 mmの骨孔を作成した。術後1週でマウスを屠殺し、骨孔修復部の組織を採取して、RNA-sequencing により発現遺伝子を網羅的に解析した。 RNA-sequencing 解析により、野生型マウスの骨孔修復部における組織中の Estrogen receptor (ER)α、ERβ、Semaphorin 3A、Type I collagen、endothelial NOS の mRNA 発現量が雄より雌で有意に高値であった。 以上の結果から、骨孔部における骨修復に与える E2 のアナボリックな作用が NO を介した作用であることが示唆され、更なる解析を重ねた上で研究成果を報告する予定である。
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