研究課題/領域番号 |
18K09090
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
馬場 力哉 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (40815742)
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研究分担者 |
岩崎 倫政 北海道大学, 医学研究院, 教授 (30322803)
小野寺 智洋 北海道大学, 大学病院, 講師 (70547174)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒトiPS細胞 / GM3 / 細胞特異的糖鎖解析 / R-17F / 二次抗体 |
研究実績の概要 |
本研究はより安全で効率的なiPS細胞を用いた軟骨再生医療を実現することを目指す。本研究では ①ヒトiPS細胞から軟骨細胞への分化過程で特徴的な構造変化を示す糖鎖が存在する。その糖鎖を制御することで、効率的な分化誘導法が確立できる。②細胞特異的糖鎖解析の手法を用いて、未分化iPS細胞特異的に細胞傷害性を持つ抗体R-17Fの至適使用条件を決定することができる、という2つの仮説を検証した。 仮説①に対し、我々は過去にマウスiPS細胞から軟骨細胞分化過程で、Fucosyl GM1 糖鎖が増加することを示した。ではヒトiPS細胞から軟骨細胞への分化過程でも、特徴的な構造変化を示す糖鎖が存在するかを検証した。ヒトiPS細胞から間葉系幹細胞様細胞(iPS-MSCs)を介して軟骨細胞へ分化誘導し、経時的な糖鎖構造の変化を解析した。その結果、マウスiPS細胞でみられたFucosyl GM1糖鎖のヒトでの発現はみられなかった。 次に仮説②に対し、細胞特異的糖鎖解析を用いた軟骨細胞中に混入する未分化iPS細胞の検出、定量化法を確立し、またLNFP 1 糖鎖を認識し、細胞傷害性を持つ抗体R-17F(Matsumoto et al., 2015)のiPS細胞除去効果を糖鎖解析の手法で推察できることを明らかにした(Miyazaki et al., IJMS, 2019)。次に我々は、糖鎖解析による検出法を用い、R-17Fの至適使用条件を検討することにした。R-17Fの二次抗体を併用することでiPS細胞への細胞傷害性が増強することに着目し、iPS細胞と軟骨細胞の共培養にR-17F、二次抗体を添加することで、未分化iPS細胞を検出感度以下まで除去可能であることを明らかにし、さらに抗体処理した共培養細胞をSCID miceに移植し、teratomaが形成されないことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮説①に対しては、ヒトiPS細胞から軟骨への分化過程での網羅的糖鎖解析を終了し、2回目の糖鎖解析においても結果の再現性が得られたため、その成果を報告した(Liang Xu et al., Biomolecules, 2020)。 仮説②に対しては、細胞特異的糖鎖解析による未分化iPS細胞の検出、定量化法を確立し(Miyazaki et al., IJMS, 2019)、その方法を用いてiPS特異的に細胞傷害性を持つ抗体R-17Fの至適使用条件を決定した。二次抗体を併用することで検出感度以下まで未分化iPS細胞を除去可能であり、動物実験で腫瘍化しないことも確認した。現在論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
仮説①については、解析結果を論文にて報告した。 仮説②については、本年度中に論文を投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの流行により、実験の機会が若干減少したために、次年度使用額が生じた。仮説②に対して、これを証明するための実験は概ね終了している。この成果を論文として投稿準備中である。査読に関わる追加実験の必要性があると見込まれ、また学会活動などに関して、この次年度使用額を使用する予定である。
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