研究実績の概要 |
本研究はより安全で効率的なiPS細胞を用いた軟骨再生医療を実現することを目指した。①ヒトiPS細胞から軟骨細胞への分化過程で特徴的な構造変化を示す糖鎖が存在する。その糖鎖を制御することで、効率的な分化誘導法が確立できる。②細胞特異的糖鎖解析の手法を用いて、未分化iPS細胞特異的に細胞傷害性を持つ抗体R-17Fの至適使用条件を決定することができる、という2つの仮説を立てた。仮説①に対し、ヒトiPS細胞から軟骨細胞への分化過程でも、特徴的な構造変化を示す糖鎖が存在するかを検証した。その結果、マウスiPS細胞でみられたFucosyl GM1糖鎖のヒトでの発現はみられず、GM3の発現量は著しく減少し、一方GM1、GD3、GD1の発現は増加した。次に仮説②に対し、我々はAminolysis-SALSA法を応用することで、細胞特異的糖鎖解析を用いた軟骨細胞中に混入する未分化iPS細胞の検出、定量化法を確立し、またLNFP1糖鎖を認識し、細胞傷害性を持つ抗体R-17FのiPS細胞除去効果を糖鎖解析の手法で推察できることを明らかにした。また、iPS細胞と軟骨細胞の共培養にR-17F、二次抗体を添加することで、未分化iPS細胞を検出感度以下まで除去可能であることを明らかにし、さらに抗体処理した共培養細胞をSCID miceに移植し、teratomaが形成されないことを示した。仮説①に対しては、その成果を報告した(Liang Xu et al., Biomolecules,2020)。仮説②に対しては、細胞特異的糖鎖解析による未分化iPS細胞の検出、定量化法を確立し(Miyazaki et al., IJMS,2019)、また前述の方法にて、未分化iPS細胞除去の安全性も確認した。このiPS細胞の新たな検出法を用いた未分化iPS細胞の除去法の報告をもって、本研究の最終的な到達点と考えている。
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