本研究の目的は、RGDペプチドを用いた非細胞足場素材と移植用細胞を組み合わせたRGDペプチド三次元細胞構造体による新たな軟骨・半月板再生医療技術を開発することである。初年度は、RGDペプチド三次元細胞構造体調製法の最適化を行い、RGDペプチドを用いた非細胞足場素材の使用がより大きな軟骨塊の形成に有用であることを明らかにした。令和元年度は、細胞接着性の有用性を明らかにするため、比較対照としてRGDペプチドを含まない非細胞足場素材の選定・三次元細胞構造体調製法の最適化を行った。令和2年度は、RGDペプチド3次元構造体の生体内評価を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により動物実験の開始が困難となったため、計画を変更し、研究の意義・目的を明確にするため手術レセプトデータを用いた人工関節置換術の統計解析を行い、論文で報告した。今年度はRGDペプチド3次元構造体の生体内評価の検討の続きを行った。椎間板は自己再生能力に乏しく、主に加齢に伴って細胞外基質の量的・質的劣化による変性が生じ、軟骨・半月板と同様に、組織修復・再生のためには外部から修復機能を発揮できる細胞を補うことが有望である。しかし、組織の再建には足場として環境に適した生体材料が必要となることから、RGDペプチド3次元構造体と滑膜幹細胞による椎間板治療の可能性について検討し、ラット椎間板への滑膜幹細胞移植モデル作成における課題の整理を行った。
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