研究実績の概要 |
悪性腫瘍に対する免疫療法は革新的治療効果をもたらしつつあるが骨軟部腫瘍領域においては十分な研究がなされていない。申請者は胞巣状軟部肉腫や滑膜肉腫においてCD8陽性リンパ球が豊富に腫瘍内に存在し予後と大きく関連することを見出した。引き続き本研究では骨軟部肉腫で発生頻度の高い、脂肪肉腫について解析を行った。CD4+ , CD8+ , FOXP3+ リンパ球 CD163+ マクロファージ、 HLA class I PD-L1の組織型ごとの発現と予後を解析した。その結果同じ脂肪肉腫であってもその組織亜型にによって免疫細胞の動態が大きっ異なることを明らかにした。すなわち粘液型脂肪肉腫ではそもそもHLA class Iの発現が著しく低下していること、腫瘍内マクロファージは予後悪化に関連していること、PDL-1の発現はほとんどみられず従って現行のニボルマブのような薬剤の治療効果は期待しにくいこと、マクロファージ阻害が治療に導く可能性等を見いだした。一方で脱分化型脂肪肉腫では逆にマクロファージは予後良好に寄与している可能性がある。HLA class Iの発現は脱分化型脂肪肉腫では維持されているためニボルマブのような薬剤の有効性に期待が持たれる、しかし脱分化型脂肪肉腫、および多形型脂肪肉腫においてもPDL-1の発現は上皮系腫瘍のようには高くないことを明らかにした。これらの研究結果はOike N, Kawashima H, Ogose A et al. Human leukocyte antigen I is significantly downregulated in patients with myxoid liposarcomas. Cancer Immunology Immunotherapy 2021 に論文として発表された。
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