研究課題/領域番号 |
18K09100
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高橋 淳 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60345741)
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研究分担者 |
小関 道彦 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (50334503)
大場 悠己 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (10792129)
加藤 博之 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (40204490)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 早期発症側弯症 / 脊椎矯正固定術 / 手術シミュレーション |
研究実績の概要 |
本年度は、早期発症側弯症に対する脊椎後方矯正固定術を模擬した実験に用いる脊椎模型の製作に注力した。この模型は、椎間板を模した鋼球およびラバーバンドによって5つの椎骨要素を接続することによって構成される。この3自由度の変形が可能な椎間板要素の存在により、側弯した脊椎模型をスクリューとロッドによって後弯状態へと矯正固定することを可能としている。また、各椎骨要素には流体圧により駆動するピストンとシリンダが備えられており、矯正固定した状態でも全長を延伸することが可能である。文献値に基づき、各椎骨は流体駆動により当初の135%の大きさにまで成長できるよう設計した。 この模型を用いて矯正固定術後に脊椎が成長することによる変形挙動について実験を行った。まず、凹側だけを固定した状態で脊椎の成長を模したところ、脊椎の弯曲および回旋の増悪を観察することができた。これは、本研究が注目するクランクシャフト現象を再現していると考えられる。一方、本研究で提案する凸側だけを固定するCVSSF法を適用したところ、脊椎の回旋が改善することが確認された。これらの実験結果は、予備実験で行った計算機シミュレーションの結果を裏付けており、提案手法の有用性の確認に至った。 さらに、本実験を通じて側弯の凹側固定だけでなく矯正不足もクランクシャフト現象が生じる重要な因子であることが明らかとなり、今後の臨床に対して重要な示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では研究2年目(平成31年度)に模型実験を実施する予定だったが、研究アイデアの発端となる計算機シミュレーションの妥当性を確認することが先決であると考え、これを前倒して検討した。その結果、上述の通り提案手法の有用性を確認できたため、今後の検討の礎を強化することができた。また、側弯症患者データの他施設からのデータ収集も順調に進められている。一方で、当初1年目(平成30年度)に計画していた患者別解析モデルの構築には至っていない。このため「当初の計画以上に進展している」とは言えず、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した脊椎模型は、その駆動力が小さく、実際の矯正固定術のように両側固定した場合には成長させることができなかった。製作精度を高めることにより大きい駆動力が得られると期待されるが、異なる駆動方式もあわせて検討したい。そのうえで、当初予定通り患者別解析モデルを用いた計算機シミュレーションの実施およびその妥当性検証実験と進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)当初計画では2年目に実施する予定の実験を1年目に実施した。このとき、模型製作には研究者所属機関が保有する3Dプリンタを無償で利用できたため、費用を大幅に削減することができた。 (使用計画)当初1年目に計画していた解析モデル構築ソフトウェアの制作に使用する。また、前述の通り模型の製作精度を高める必要があり、機械メーカーに発注する計画である。
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