研究実績の概要 |
末梢神経(坐骨神経)損傷モデルマウスを用いて、KEGG pathway解析によりSchwann 細胞の脱分化過程においてPI3K/Aktシグナル、 Wnt/β-cateninシグナル活性が優位に低下すること、またリアルタイムPCR解析により脱分化過程の超早期において転写因子Egr1, cFosが発現上昇することを明らかにした。 さらにPI3K/Aktシグナルの関与を解析するため、PI3K/Aktシグナル亢進マウスにおいて末梢神経損傷モデルマウスを作成。神経損傷時、PI3K/Aktシグナルはミエリン崩壊(脱髄化)を抑制する一方で未分化Schwann細胞自体の増殖は亢進させることを、免疫組織化学的手法を用いて明らかにした。 今後、Sox10-Cre-ERT2マウスとRosa26-stop-Ptenマウスを交配させることによりPI3K/Akt シグナル抑制マウスを作成。上記と同様の実験とともに運動機能解析を行い、同シグナルの関与の解析をさらに進める予定である。 今回の研究によって末梢神経再生にとって重要とされるSchwann細胞脱分化過程において、PI3K/Aktシグナルが脱分化を抑制する一方で、未分化Schwann細胞増殖を亢進させるという相反する作用を持つ可能性が示唆された。また未分化Schwann 細胞の形質維持に必須の候補遺伝子として転写因子Egr1, cFos が明らかとなった。これは脱分化シグナルに作用するシード化合物を同定することや、ダイレクトリプログラミング手技を用いて未分化 Schwann 細胞を誘導することによる新しい末梢神経再生医療を開発する際に重要な知見になると考えられる。
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