研究実績の概要 |
一般住民におけるフレイルとロコモについて,疼痛程度,膝・腰椎変性(膝OA,腰OA)との関連の相違を検証するため,北海道八雲町の運動器健診を受診した中高齢者1016名(男性427名,女性589名,平均年齢64.3歳)を対象に調査した.ロコモ25で16点以上をロコモとし, フレイル診断はFriedの基準に準じて「体重減少」,「疲労感」,「身体活動低下」,「筋力低下」,「歩行速度低下」の5項目中3項目以上該当をフレイルとした. 疼痛は腰痛,下肢痛,膝関節痛をVASで評価し,神経障害性疼痛(NP)有無も検討した.膝OAは単純X線検査でKellgren-Lawrence分類2度以上,腰OAはNathan分類3以上の骨棘を有するものとした. 結果として,ロコモは14.4%に認め,腰痛,下肢痛,膝関節痛が有意に強く,NP,膝OA,腰OAが有意に多かった (p<0.0001). フレイルは10.8% (110/1016名)に認め,膝OA,腰OAと有意差はなかったが,腰痛,下肢痛,膝関節痛が有意に強かった (p<0.01).しかしフレイルあり110例中,ロコモ合併群 (46例,42%)とフレイル単独群 (64例)を比較すると,ロコモ合併群で有意に疼痛が強くNPが多かった (p<0.05). 以上の結果より1016名全体では一見フレイルも疼痛の強さやNPを反映する結果となったが,フレイルの内訳を検討すると疼痛はロコモ合併による影響が明らかであり,疼痛に関する質問要素が含まれているロコモと比較するとフレイル単独では疼痛やNPを反映することが困難であった.さらにロコモは運動器のX線変性所見も反映した有用なスクリーニングであり,両者の相違を理解した上で使用する必要がある.このデータをもとに中高齢者への運動介入プログラム策定を行う.
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