研究実績の概要 |
骨粗鬆症,変形性膝関節症 (膝OA),変形性腰椎症 (腰OA)の3疾患が1つもない中高齢者の因子は明らかにすべく,一般住民健診データを用い解析した. 北海道八雲町の運動器健診を受診した中高齢者1021名 (男性440名,女性581名,平均年齢63.4歳)を対象とした.膝や脊椎手術の既往,脊椎骨折のある受診者は除外した. 3疾患がひとつもないN群と,いずれか1つ以上あるD群に分け,年齢,性別,body mass index (BMI) ,疼痛, 運動機能や筋力,重心動揺検査,脊椎アライメント,QOL (SF-36)との関連を調査した. 結果として, N群(440名,43%)はD群(581名,57%)に比べ,BMIが有意に低く,腰痛や膝痛が軽度で,10m歩行速度などの運動機能が優れ,背筋力,握力が強かった(p<0.0001).N群ではさらに重心動揺値が安定し,仙骨傾斜角や腰椎後弯角,脊柱前傾角,腰椎可動域などの脊椎アライメントが良好であった(p<0.0001).N群ではQOLも有意に高かった(p<0.0001).年齢,性別で補正した多変量解析によるN群の関連因子検討では,BMI低値(Odds Ratio [OR]:1.2, p<0.05),10m歩行速度(OR:3.7, p<0.0005),背筋力(OR:1.03, p<0.05),腰椎前弯角(OR:1.20, p<0.01),脊柱前傾角(OR:1.2, p<0.05)などが独立した関連因子であった. 以上の結果より骨粗鬆症,膝OA,腰OAがひとつもない一般中高齢者に関連する因子が同定できた.歩行能力や筋力、脊椎アライメントなど高齢者の健康寿命延伸のために重要な因子が明らかとなり,このデータをもとに中高齢者への運動介入プログラム策定を行う.
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