研究実績の概要 |
週齢10週の野生型マウスであるC57/BL6J)に対し内側半月前角切離(DMM)による変形性関節症モデルを作成し、EPA(60μg/20μl)、コーンオイル(20μl)、EPA含有ゼラチンハイドロゲルの関節肉注射を行い投与後1週及び8週でsacrificeし3群間で比較検討行った。術後1, 8週の時点で安楽死させて回収しておいた組織、及び細胞を用いて各種染色を行った。Safranin O染色でEPA含有ゼラチンハイドロゲル群で最も軟骨基質の染色性が保たれた。同群滑膜組織においてはコーンオイル群、EPA注射群と比較して、F4/80染色でマクロファージの浸潤抑制、炎症性サイトカインのIL1 betaの発現低下、IKKのリン酸化低下を認めた。さらに炎症を起こすM1マクロファージと組織修復に働くM2マクロファージの発現変化をみたが、EPA投与によりこれら両方の発現を抑制していることがわかった。軟骨組織において軟骨基質分解酵素のMMP3, MMP13の染色性の低下を認めたことよりEPAはin vivoにおいてマクロファージの浸潤を抑制することによりIKKを介したMMPsの発現を抑制し軟骨基質の分解を抑制する働きを持つこと、さらにEPA含有ゼラチンハイドロゲルの投与がEPA注射よりも効果があることがわかった。さらにin vitroにおいて変形性膝関節症患者より採取し分離培養した軟骨細胞に対しIL1 beta刺激下にEPAの投与を行うとIL1 betaによるIKKの活性、MMP3, MMP13の発現増強はEPA投与により全てキャンセルされたことよりEPAの炎症抑制効果に対する生理活性は非常に強いことが証明された。以上の研究によりゼラチンハイドロゲルの臨床応用における有用性が示唆された。
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