研究課題/領域番号 |
18K09114
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
小栗 雄介 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 臨床研究医 (80528969)
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研究分担者 |
永谷 祐子 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90291583)
川口 洋平 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (90766734)
黒柳 元 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (80790831)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / テネイシンC / グリオスタチン / 滑膜炎 / 滑膜細胞 |
研究実績の概要 |
関節リウマチ (RA) に対する新規薬剤 (生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤) が次々上市されているが、未だ関節破壊の制圧 は達成されてない。関節機能障害をきたし生活の質の低下をもたらすRA制御のために、さらなる治療ターゲットの探索が必要で ある。グリオスタチン (GLS) は、多彩な生理活性を有するタンパク質であり、滑膜に対しては起炎症作用とパンヌス形成作用 を示す。またテネイシンC (TNC) は、Toll様受容体4を活性化する。申請者はヒト培養線維芽滑膜様細胞においてGLSが炎症を促 進し、軟骨破壊を促進するTNCを誘導することを予備実験にて確認した。これまでのGLSに関する研究とTNCの作用機序から、TNC とGLSとの炎症の連鎖が示唆される。本研究では、これらの炎症のシグナル伝達を明らかにすることが目標であり、新規治療タ ーゲットを提示し、さらに新しいRA治療薬剤開発を目指す。 本年度は、ACR/EULAR RA分類新基準にて診断されたRA患者を対象にし、従来型抗リウマチ薬(csDMARD)、生物学的製剤及びヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤使用中の患者の血清を採取し、凍結保存し、症例収集中である。これまで申請者らはcsDMARD治療を行ったRA患者の血清GLS濃度は疾患活動性と相関することを報告した。またRA患者の血清に おいてTNC濃度も上昇していることが報告されている。そこで本研究においてcsDMARDのみならず生物学的製剤及びJAK阻害剤使 用患者におけるTNCとGLSの血清濃度とRAの疾患活動性の指標 (DAS28-ESRなど)、治療効果との相関を明らかにする。GLSタンパ ク質の測定には当教室で開発した酵素免疫測定法を用いる。本法は正確で、低コストでの測定が可能であるため多数のサンプル を測定することが可能である。TNCに関しては市販の測定キットを用いる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清は予定どおり収集できている。また人工関節置換術時に採取した滑膜細胞を用いた研究において、本年度に得られた検体の多くがすでに生物学的製剤使用下であり、もともとグリオスタチンの産生能の低下した細胞株があり、計画どおりの刺激実験ができない時期があったが、おおむね予定した実験を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
テネイシンCとグリオスタチンの滑膜組織上においての局在を調べ、作用部位を明らか にする。人工関節置換術時に採取した滑膜組織を抗テネイシンC抗体と抗グリオスタチン抗体を使用し免疫組織二重染色を行う。 滑膜組織から分離培養した線維芽細胞様滑膜細胞 を用いてグリオスタチン刺激によるテネイシンCの発現をPCRおよびELISAにて測定する。申請者らはRA患者の関節液中のグリオスタチン濃度は平均約300 ng/mlであり、さらにこの濃度で線維芽細胞様滑膜細胞を刺激するとMMPs (matrix metalloproteinases)の発現を促進し軟骨破壊を誘導することを示した。この結果に基づきGLS 300 ng/mlの濃度で線維芽細胞様滑膜細胞を刺激しテネイシンCの発現を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
30年度はテネイシンC刺激によるグリオスタチン産生をmRNA とタンパク質レベルでの検討を中心に行なった。そのためテネイシンCのELISA plateの購入をしなかったため上記の次年度使用額が生じた。31年度に購入し、予定どおりの実験を施行する。
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