研究課題/領域番号 |
18K09117
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
西尾 尚子 和歌山県立医科大学, 医学部, 特別研究員 (40648359)
|
研究分担者 |
谷口 亘 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20453194)
山中 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (30597084)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 変形性膝関節症 / TRPV1 / CatWalk |
研究実績の概要 |
本年度は変形性膝関節症における荷重時痛にtransient receptor potential vanilloid 1 (TRPV1)チャネルが関与しているかを動物行動学的に自然歩行状態解析装置であるCatWalkを用いて検討した。変形性関節症モデルラット15匹を①TRPV1選択的作動薬capsaicin(100μM 100μl)注入群(C群)、②TRPV1選択的阻害薬capsazepine(100μM 100μl)注入群(Z群)、③コントロールとしての生理食塩水(100μl)注入群(S群)の3グループに振り分け、各群5匹で1匹当たり1日3trial(歩行)行った。変形性関節症モデルラットはMonosodium Iodoacetate (MIA)モデルを用いた。注入前(0日)、注入後1日、2日、7日、10日でそれぞれ解析を行った。各種パラメーターは歩行当たりの健側比 (%)(右後肢 / 左後肢×100)の平均を算出した。各種パラメーターの内、Max Contact Area, Swing Speedに注目し、各関節内試薬注入群間での比較を行った。これら項目に関して、処置前の各群に有意差は無かった。各日におけるC群、Z群、S群間の平均を比較したところ、Z群のSwing Speedは処置2日目からC群より(Z群86.7 ± 6.3 %, C群69.0 ± 2.9 % : P < 0.05)高い結果となり、7日目まで続いた(Z群93.5 ± 5.3 %、C群70.9 ± 4.5 % : P < 0.05)が、10日目には有意差が消失した。一方、Max Contact Areaは7日目まで各群間に有意差は生じなかったが、10日目にはZ群がC群よりも有意に高い結果となった(Z群93.8 ± 5.3 %、C群66.7 ± 4.5 % : P < 0.05)。以上の結果から、TRPV1チャネルの活性化や抑制化は変形性膝関節症の機械刺激による疼痛発生機序になんらかの遅発性の作用をもたらしている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変形性膝関節症モデルラットへのTRPV1チャネルの作動薬および拮抗薬の関節内投与は、遅発性に疼痛行動の変化をもたらした。本研究はこのことから、荷重時痛などの機械刺激が関与する慢性痛に膝関節内のTRPV1チャネルの活性化が一部関与していることを示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き研究計画に従い、荷重時痛などの機械刺激に関与するとされているPiezoチャネルとTRPV4チャネルの活性化が正常ラットにおける自然歩行状態において疼痛を発生させるかを動物行動学的手法であるCatWalkを用いて検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用分が発生したが端数分である。次年度請求分においても研究計画に従い、必要な研究器具、動物、試薬等の消耗品に使用する予定。また研究成果に応じて学会等で発表を行う際の旅費として使用を計画している。
|