研究課題
関節リウマチでは骨破壊とともに、パンヌスと呼ばれる異常な滑膜細胞の増殖と骨への浸潤がみられる。パンヌス中に破骨細胞が見られるが、一方パンヌスの中に骨芽細胞は存在しない。そのためパンヌス中の主たる細胞である滑膜線維芽細胞が骨芽細胞の代わりに破骨細胞の分化誘導をしている可能性が考えられた。しかし、その後の実験によりマウス破骨細胞の分化がヒトのM-CSFとRANKLによりin vitroで誘導可能であるにも関わらず、ヒト滑膜線維芽細胞はマウス骨芽細胞と異なりマウス破骨細胞前駆細胞と共培養しても破骨細胞の分化を誘導できなかった(キメラ共存培養系)。従ってヒト滑膜線維芽細胞は破骨細胞誘導能に関してはマウス骨芽細胞と異なる性質を持つ。さらに解析したところ、ヒト滑膜線維芽細胞はビタミンD3(1,25(OH)2D3)とプロスタグランジンE2(PGE2)の刺激によってもRANKLを産生せず、逆にOPGを高産生していた。また、マウス骨芽細胞はRANKLを産生したが、意外なことにより多くのOPGを産生していた。この結果を受けて、マウス新生児の頭蓋冠から調整した骨芽細胞とマウス骨髄細胞を共存培養、あるいはバスケットを用いた分離培養に供した。破骨細胞はは酒石酸耐性酸ホスファターゼ染色により同定した。従来の共存培養とは異なり、骨芽細胞と骨髄細胞を分離して培養すると、ビタミンD3+PGE2の存在下でも破骨細胞は誘導できなかった。誘導にはM-CSF, RANKLの外部からの添加を必要とした。このことから破骨細胞分化には可溶性RANKLではなく膜型RANKLの存在が重要であることが示された。これは破骨細胞が異所性に分化することを防ぐためのメカニズムである可能性がある。また破骨細胞前駆細胞の生存には骨芽細胞由来のM-CSFだけでは不十分であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Nfatc1アイソフォーム特異的ノックアウトマウスが作出されるまでの予備実験としてin vitroの共存培養系の立ち上げを試みており、ある程度の成果をあげているため。
今回研究機関の異動があったが早急に動物実験の出来る体制を作り上げ、遅くとも最終年度には遺伝子改変マウスの解析に取りかかる予定である。
次年度使用額は5万円を切っており、ほぼ予定通りとなっている。
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http://www.saitama-med.ac.jp/uinfo/riumachi/index.html