研究課題/領域番号 |
18K09122
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
山田 治基 藤田医科大学, 医学部, 教授 (40146626)
|
研究分担者 |
土田 邦博 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 教授 (30281091)
吉村 典子 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (60240355)
森田 充浩 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (80511287)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 関節軟骨 / 変形性関節症 / マーカー / 病態評価 |
研究実績の概要 |
iTRAQ法は網羅的な分析が可能で、全サンプルをトリプシン消化し質量分析計にかけるショットガンプロテオミクスを本研究で採用した。一般的なプロテオミクス解析においては、存在量の多いタンパク質に対する変動を検出傾向にあるが、OA軟骨における希少タンパク質の変動を同定するためにiTRAQ法を用いて網羅的なプロテオミクス解析を行いOAのバイオマーカー候補となりうる分子を探索した。 人工関節置換術を施行した患者から採取された関節軟骨をOA群、大腿骨頚部骨折患者の骨頭から採取した軟骨を対照群とした。関節軟骨をホモゲナイズして上清を回収し、ランダムペプチドカラムを用いて希少タンパク質を濃縮した。抽出したタンパク質をiTRAQ法を使用して網羅的なプロテオミクス解析を行い、発現変動するタンパク質を同定した。同定されたタンパク質の定量にはWestern blot法を用いた。 iTRAQ法を使用してOA群と対照群を比較して合計76個の変動するタンパク質を同定し、その中から今までにOAマーカーとして報告のない3つのタンパク質を選択した。LECT2 (Leukocyte cell-derived chemotaxin-2) はOA群で有意に上昇しており、BAALC (Brain and Acute Leukemia, Cytoplasmic) はOA群で上昇傾向を認めた。PRDX6 (peroxiredoxin-6) はOA群で有意に減少していた。3つのタンパク質について、年齢・OAの重症度分類・身長・BMI・性別・関節の部位で比較を行ったところ、身長とLECT2のみ相関を認めた。 LECT2とBAALCは軟骨細胞の増殖に関与し、PRDX6は抗酸化作用を有することが知られている。これらのタンパク質と従来のバイオマーカーと組み合わせることでOAの発症や予後をより正確に予知する助けになると期待している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iTRAQ法は網羅的な分析が可能でOA軟骨における希少タンパク質の変動を同定するためにiTRAQ法を用いて網羅的なプロテオミクス解析は極めて有効な手法であるが、コストがかかるため、まずOAと正常関節軟骨に対して2例ずつの解析を行った。 限られた解析回数ではあったが、2群間に有意な発現の差を認める3つタンパクを検出し、マーカー候補を選定することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今回、特定した3つのマーカー候補について、既発症OA症例およびコントロールとしての大腿骨頸部骨折患者からの血清を対象として特異的EI Aにより新規マーカー候補タンパクであるLECT2およびPRDX6レベルを測定する。OA症例では患者背景、単純X線にお けるKL分類、MRI所見との関係を検討することによってOA重症度やOAのいかなる病態をこれらの新規バイオマーカー候補タンパ クの血清レベルが反映しているか否か、すなわち病態マーカーとしての有用性を検討する。大腿骨頸部骨折例との比較により、 OAであるか否かを特異的に診断可能な、いわゆる診断マーカーとしての有用性を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度の研究での症例数が限定されていた関係で、次年度使用額が生じた。
|