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2019 年度 実施状況報告書

骨・肝・脂肪の臓器連関の視点からみた糖尿病性骨粗鬆症における組織因子の役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K09123
研究機関奈良県立医科大学

研究代表者

辰巳 公平  奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70555432)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードTissue factor / 糖尿病 / 骨粗鬆症 / 骨修復
研究実績の概要

1年目に引き続き2年目も、マウスモデルを用いた実験による検討を詳細に行った。TF完全欠損マウス(mouse TF-/-)は胎生致死のため、ヒトTF minigeneの挿入により微量のTF活性が残存するLow TFマウス(mouse TF-/-, human TF+/+)を実験に用いた。8-12週齢の雄性の野生型およびLow TFマウスにストレプトゾトシン(STZ)を200mg/kg/b.w.の用量で腹腔内投与して糖尿病を誘発した。随時血糖が300mg/dl以上になった個体を糖尿病と定義し、以後の実験に使用した。糖尿病誘発確認の2週間後、マウスの片側大腿骨に径0.8mmの骨欠損を作成し、作成後から1週間、経時的にその骨修復過程を定量的CTを用いて解析した。また、骨欠損作成時に非損傷側の大腿骨にて同様に定量的CTを用いて骨密度の測定を行った。
結果、STZによる糖尿病の誘発率において、野生型マウスとLow TFマウス間で差異は認めず、増加した血糖値についても両マウス群間で有意差は認めなかった。従って、TF欠損状態自体は糖尿病の発症や病態の進展には大きな影響を与えないことが示唆された。また、糖尿病誘発前の時点で野生型マウスとLow TFマウス間で骨密度に有意差はなく、両マウス群とも糖尿病誘発2週後にて海綿骨優位の有意な骨密度低下(糖尿病性骨粗鬆症)を呈したが、その低下の程度は両群間で有意差を認めなかった。従って、TF欠損状態自体は骨密度や骨粗鬆症病態に与える影響は小さいことが示唆された。しかし、骨欠損作成後の修復過程においては、野生型マウスに比べLow TFマウスは有意に遅延する結果が得られた。すわなち、糖尿病病態下における骨修復過程にTFは促進的に働く作用を有することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の基幹データとなる重要な実験データを、マウスを用いたin vivo実験で得ることができた。最終年度となる3年目は、動物実験で観察された現象について、主に培養細胞等を用いたin vitro実験にて機序の解析に取り組む予定である。

今後の研究の推進方策

ここまでのマウスモデルを用いた研究において、TF欠損状態は骨密度に影響を与えず、糖尿病性骨粗鬆症の発症やその重症度に対しても影響を与えないが、糖尿病性骨粗鬆症発症後の骨損傷後骨修復過程はTF欠損状態で有意な遅延が見られることが確認された。すなわち、TFは、糖尿病病態の骨組織の骨修復に対して促進的に作用することが示唆された。
最終年度となる3年目は、動物実験で観察された現象について、そのマウスサンプルや培養細胞等を用いたin vitro実験にて機序の解析に取り組む予定である。具体的には、骨組織サンプルを用いて、免疫組織化学および分子生物学的解析を用いた骨芽細胞分化・増殖能解析、破骨細胞形成・骨吸収関連遺伝子評価、軟骨・血管形成関連分子の解析、脂肪・凝固線溶関連分子の評価などを行うとともに、血中骨代謝マーカー(CTX、骨型ALP、オステオカルシン)の評価を行う。さらには、Low TFマウス由来の初代培養細胞やTFを過剰発現あるいはノックダウンさせたマウス細胞株を用いて、TFが骨芽細胞系、破骨細胞系、脂肪細胞、肝細胞、骨格筋細胞に及ぼす作用のメカニズムを、凝固線溶系を介する機序と介さない機序の両者の視点から、さらに網羅的遺伝子解析を用いて、TFが作用することにより誘導されるシグナルを探索する。骨芽細胞系としては、新生仔マウス頭蓋骨由来初代培養骨芽細胞、BMP-2添加骨髄細胞培養系、間葉系幹細胞、あるいはマウス骨芽細胞株(MC3T3-E1細胞)や間質細胞株(ST2, 10T1/2細胞)を、破骨細胞系の検討として、初代培養骨髄細胞、およびマウスマクロファージ様破骨前駆細胞株(Raw264.7細胞)を使用する予定である。

次年度使用額が生じた理由

最終年度には、培養細胞実験に用いる各種添加化合物や、遺伝子発現量やタンパク量の定量に用いる実験試薬に相当額の助成金が必要になることが見込まれ、2年目の未使用額である22,212円を、最終年度の試薬購入に充当する予定である。

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公開日: 2021-01-27  

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