平成30および31年度の実験結果から、TRPV1/4ダブルノックアウト(DKO)マウスは野生型のC57Bl6J(WT)マウスよりも骨量が多いことが明らかとなった。その機序として、DKOマウスでは破骨細胞系の分化能や活動性の低下に加え、骨芽細胞系の分化能や活動性が亢進していることが示唆された。令和2年度は、これらの研究成果をまとめ国際的な英文雑誌であるBone Reportに投稿し受理された。 さらに我々は、今回の研究成果よりDKOマウスにおいて破骨細胞系が低下し、骨芽細胞系が亢進していた事から、DKOマウスでは骨粗鬆症モデルにおける骨量低下を抑制できるのではないかという着想に至り新たな実験を行うこととした。骨粗鬆症モデルとして8週齢雄性のDKO、WTマウスを用いて2週間の尾部懸垂(TS)を行った。対照群として2週間のground control(GC)群を設けた。実験終了後にマウスを屠殺し、両大腿骨と脛骨を採取した。左大腿骨を用いてDXA、右大腿骨を用いてμCTでの解析を行った。その結果、DEXAではWTおよびDKOマウスともTS群ではGC群と比較し有意に骨量が低下していたが、DKOではその減少量が少なくDKOマウスのTS群はWTマウスのTS群と比較し有意に骨量が多い結果となった。またμCTの結果も同様で、BMD、BV/TVのパラメーターにおいてWT、DKOマウスともTS群ではGC群と比較し有意に低下していたが、DKOではその減少量が少なくDKOマウスのTS群はWTマウスのTS群と比較し有意に高値を示していた。この事からDKOマウスでは骨粗鬆症モデルにおいても骨量減少を抑制できる可能性が示唆された。
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