研究課題
北海道大学病院泌尿器科で行われた生体腎移植384例のうち、移植前にDSAの認められなかった251例を対象とした。そのうちMM eplet数が計算できたのは104例であり、これらの症例のクラスII MM eplet数は中央値10(0-30)であった。MM eplet数10以上の53例と10未満の51例とで比較したところ、移植腎生着率に差は認められず(p=0.58)、新規DSA(de novo DSA)の出現率についても有意差は認められなかった(p=0.45)。続いて、研究代表者の新任地である自治医科大学病院で2006年以降に生体腎移植を行った337例のうち術前DSAを認めなかったのは222例で、MM eplet数が計算できたのは167例であった。これら症例のクラスII MM eplet数は中央値11(0-36)であった。MM eplet数11以上の84例と11未満の83例との比較では移植腎生着率は有意差は認められなかった。なお、移植腎生着率については両施設のデータを統合しても(解析対象症例数261例)MM eplet数と生着率に有意な関係は認められなかった。以上より、研究に組み込まれた2施設においてはMM eplet数の多寡のみでは移植腎予後に明らかな影響を認められず、その理由としては十分な症例数が集まらなかったこと、観察期間が十分でなかったこと、両施設ともに免疫抑制プロトコールが年代によって変遷しており同じ条件での比較ができていないことにあると思われた。また、日本人という比較的HLA多様性の少ない国民ではMM eplet数の多様性も少なく、これのみで差が出づらい可能性も考えられた。今後は、諸家の報告によるMM eplet数のリスク評価を元にしてCAMRのリスク階層化を行い、それに従った免疫抑制プロトコールの使い分けを行い、前向き研究を立ち上げるべく研究の準備を行っている。