研究課題/領域番号 |
18K09130
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
冨田 善彦 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90237123)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害薬 / 腎細胞癌 / PD-1 / PD-L1 |
研究実績の概要 |
<対象と方法>平成30年度は、本施設において免疫チェックポイント阻害薬を使用した進行性腎細胞癌20症例を対象とし、その原発巣の組織切片に対し、免疫組織学的に免疫関連分子の発現を検討し、これらの発現と臨床的因子の解析を行った。免疫関連分子標的薬のうち、PD-1およびPD-L1、免疫反応の際に、腫瘍の感受性を規定する可能性のある分子、XIAPとBcl-2の発現も検討した。これら4分子に対し、使用した抗体は、それぞれclone EH33、clone E1L3N、clone 28、clone 124。陽性対照は、扁桃、胎盤、正常腎、正常腎とし染色条件を決定した。 <結果>腫瘍部分の染色強度、染色領域をそれぞれ4段階(強度;陰性、弱陽性、陽性、強陽性。領域;25%未満、25-50、50-75、75%以上)でスコアリングし、その積を染色スコアとして評価した。PD-1、PD-L1、XIAP、Bcl-2それぞれの陽性対象と比較してカットオフ値を設定した結果、陽性症例はそれぞれ12例(60%)、9例(45%)、9例(45%)、10例(50%)であった。原発巣の組織学的悪性度との関係では、組織学的グレード3以上のものはPD-L1が有意に高発現であった(χ2検定、P=0.043)。Tステージとの関係では4つの分子の発現とに統計学的に有意な相関は認められなかったが、PD-1の発現の高いものに関してはより高いTステージである傾向が認められた。全生存期間との関係では、統計学的な有意差は認められなかったものの、PD-L1とBcl-2の発現が高度のもので生存期間が短い傾向にあった。 <考察>本年度の研究の結果より、従来から報告されていた免疫関連分子であるPD-L1の発現に加えて、Bcl-2やXIAPといった、感受性を規定する因子の発現が、免疫チェックポイント阻害薬に対する反応性を規定する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究について、検討した分子と予後や、予後に関連する因子との相関を示唆する結果が得られている。おおむね順調に推移していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
<令和元年度の計画> 昨年度検討した、4種の分子のほか、MHC classⅠ、MHC classⅡ、ICAM-1、EGFR、CD3、CD4、CD8、CD16、FoxP3、CD68、CD163といった腫瘍・免疫関連分子の発現について、免疫組織学的に検討を進める。また、治療反応性との相関が示唆される分子については、他施設からの症例を募り、さらに多数症例数での検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定した、研究初年度における経費、特に試薬について、想定よりも少ない検討症例であったために予定額よりも少なくなった。研究2年度目は、多数症例を検討することとなることから、初年度予算を合わせて使用する予定である。
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