研究実績の概要 |
前立腺間質における線維芽細胞の多様性が前立腺癌細胞の三次元的な細胞形態に与える影響を検討する目的で、前立腺癌患者の針生検組織から初代培養して得られた8種類の線維芽細胞pcPrFsとヒト前立腺癌LNCaP細胞との培養基質上でのin vitro混合培養実験を施行した。実験には市販されている正常ヒト前立腺間質細胞PrSCを比較対照細胞として使用した。培養基質マトリゲル上における混合培養実験では、LNCaP細胞に対してPrSCもしくはpcPrFs (-M5, -M7, -M10, -M23, -M24, -M26, -M28, -M31)それぞれを組み合わせ、線維芽細胞層におけるLNCaP細胞の三次元的な細胞形態の差異を比較検討した。 LNCaP細胞とM7, M10, M26との混合培養群では線維芽細胞の層化が不十分であり、線維芽細胞層におけるLNCaP細胞の三次元的な細胞形態は観察できなかった。一方、LNCaP細胞とPrSC, M5, M23, M24, M28, M31との混合培養群では上下に、かつ明瞭に二分化した層を形成し、線維芽細胞層におけるLNCaP細胞の三次元的な細胞形態を観察することができた。PrSC, M5, M23, M28, M31との混合培養群ではLNCaP細胞が線維芽細胞層へsingle cell migration (SCM)する像が、M24との混合培養群ではcollective cell migration (CCM)する像が観察された。スクラッチアッセイにおいて、CCMを誘導したM24の遊走能はSCMを誘導したPrSC, M5, M23, M28, M31よりも低い結果となった。 以上より、線維芽細胞層におけるLNCaP細胞の三次元的な細胞形態の差異を観察することで、癌細胞の浸潤様式を制御する線維芽細胞の多様性をスクリーニングできる可能性が示唆された。
|