研究実績の概要 |
1つ目の実験として、アンドロゲンにより制御される腫瘍内血管をin vitro3次元培養系で再現することを目的に、アンドロゲン感受性ヒト前立腺癌LNCaP細胞、市販の正常ヒト前立腺間質細胞PrSCおよびヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECを用いて、培養基質上でのin vitro混合培養実験を施行した。培養開始から48時間後に培養基質上で形成した細胞塊を組織学的に解析した結果、LNCaP細胞層と、PrSCおよびHUVECの混合層という2層に分かれていることが判明した。また、混合層においてHUVECは管腔構造を形成しておらず、PrSCと混在していることを明らかにした。理由として、PrSC、HUVECどちらも間質細胞であり、上皮細胞のような極性を有していないことに起因していると考えている。 次に、癌関連線維芽細胞由来細胞外マトリックスの分解産物であるアミノ酸(ヒドロキシプロリン)がアンドロゲン非存在下における前立腺癌細胞へのエネルギー源となっていることを検証する目的で、前立腺癌患者の針生検組織から初代培養して得られた8種類の線維芽細胞pcPrFs (-M5, -M7, -M10, -M23, -M24, -M26, -M28, -M31)を培養基質上で培養し、48時間後の培養上清に含まれるヒドロキシプロリン量を測定した。その結果、PrSCに比較して、M5, M7, M23, M24はヒドロキシプロリン量が高いものの、M10, M26, M28, M31はPrSCと同程度であった。また、pcPrFsを培養基質上でLNCaP細胞とin vitro混合培養した場合、LNCaP+M24群でのみ、ヒドロキシプロリン量が顕著に低値を示した。理由として、M24は直接的にLNCaP細胞を悪性化させる線維芽細胞であり、悪性化したLNCaP細胞ではヒドロキシプロリンの消費が激しくなるため、と推察している。
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