研究課題
フコシル化は癌および炎症における重要な糖鎖修飾の一つであり、core型、Lewis型、H型の3種類存在する。これまでに質量分析による血清タンパクの糖鎖構造解析を行い、前立腺癌患者では他の癌種と異なり、core型フコシル化が優位であり、Gleason score(GS)と関連している。血中のcore型フコシル化PSAを測定するためマイクロキャピラリー電気泳動免疫蛍光測定装置を用いて測定キットの開発を行った。前立腺癌特異的なバイオマーカーとしての有用性を検討した。マイクロキャピラリー電気泳動免疫蛍光測定装置を用い、core型フコシル化を特異的に認識するレクチンPhoSLと抗free PSA抗体によりcore型フコシル化PSAを測定するシステムを確立した。PhoSLと抗freePSA抗体と結合したcore型フコシル化free PSAをキャピラリー電気泳動により抗free PSA抗体とのみ結合したfree PSAから分離し、ピーク面積からcore型フコシル化freePSAの比率を測定した。結果、ミュータスプラットフォームにより1検体約9分の短時間で0.01ng/mlのcore型フコシル化freePSAの検出が可能であった。前立腺生検を施行したPSA20ng/ml以下の252名の男性で測定したところcore型フコシル化PSAは前立腺生検陰性患者と比べ前立腺癌患者で有意に上昇していた。またGS とも関連を認め、GS 7以上の前立腺癌ではGS6及び生検陰性群と比べても有意に上昇していた(P < .0001)。またPSAと%core型フコシル化freePSAから計算されるFucosylated PSA index (FPI)を開発し、FPIはHigh grade前立腺癌で有意に高値を示し、更にROC解析によるAUCは0.729と、PSA値のAUC0.629よりも良好な結果であった。マイクロキャピラリー電気泳動免疫蛍光測定法による血中core型フコシル化PSA測定系を確立した。
2: おおむね順調に進展している
臨床応用可能な測定系の開発に成功し、多症例での有効性が示された。
他の糖鎖タンパクとの組み合わせにより、更なる診断能の改善を目指す。また他のレクチンによるCore型フコシル化PSAの測定系を開発する。更にフコシル化転移酵素ノックアウトマウスと前立腺癌発症遺伝子改変マウスを掛け合わせ、ダブルノックアウトマウスを作成し、フコシル化の前立腺癌での生物学的機能の解析を行い、治療への応用を目指す。
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