研究実績の概要 |
フコシル化は癌および炎症における重要な糖鎖修飾の一つであり、core型、Lewis型、H型の3種類存在する。これまでに質量分析による血清タンパクの糖鎖構造解析を行い、前立腺癌患者では他の癌種と異なり、core型フコシル化が優位であり、Gleason score(GS)と関連している。マイクロキャピラリー電気泳動免疫蛍光測定法による血中core型フコシル化PSA測定系を確立し、前立腺癌特異的なバイオマーカーとしての有用性を検討した。 単独で高リスク前立腺癌の診断能に関してROC解析によるAUCは0.729と、PSA値のAUC0.629よりも良好な結果であった。α2,3シアリル化PSAは既に報告されている前立腺癌の糖鎖マーカーであるが、コア型フコシル化PSAと同時に測定することにより診断能が改善するか検討した。S2,3PSAとFucPSAの間に有意な相関を認めなかったが、S2,3PSAとFucPSAは共に、生検陰性もしくはGS6の群と比較しGS7以上の前立腺癌で有意に上昇していた。S23PSAとFucPSAから得られたS2,3PSA-FucPSA index (SF index)のGS7以上の前立腺癌診断のAUCは0.842とPSA(AUC0.632)、S2,3PSA(AUC0.711)、FucPSA(AUC0.738)よりも良好な結果であった。Decision curve解析でもPSAと比較し、SF indexは良好な結果であった。検証群では、SF indexのAUCは0.769とGS7以上の前立腺癌の診断に有用であった。また前立腺癌でも上昇するフコシル化タンパクであるハプトグロビンのコア型フコースとタンパクの構造を認識する抗体である10-7Gを開発した。現在臨床応用するにあたりコストの面で障害となるレクチンの代替品の検索を終了し、新規のELISA系を構築した。
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