研究課題/領域番号 |
18K09136
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
福森 知治 徳島大学, 病院, 講師 (10314874)
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研究分担者 |
金山 博臣 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10214446)
高橋 正幸 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (50325255)
布川 朋也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (70564342)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / ガレクチン-3 / アポトーシス / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
前立腺癌細胞に対するタキサン系抗がん剤およびPARP阻害剤の薬剤耐性に及ばすガレクチン-3の作用とそのメカニズムを解明するため、LNCaP細胞およびガレクチンー3が強発現したLNCaP-Gal-3細胞に1nMのドセタキセルあるいは10μMのオラパリブを投与し、治療効果の差を細胞のアポトーシスの程度で検討した。その結果、ドセタキセル投与群では、LNCaP細胞のアポトーシス細胞の割合は17.4%に対してLNCaP-Gal-3細胞では6.8%と有意にアポトーシスが抑制された。オラパリブ投与群でも同様に、LNCaP細胞のアポトーシス細胞の割合が24.2%であったのに対して LNCaP-Gal-3細胞では8.9%と有意にアポトーシスが抑制された。以上の結果より、タキサン系抗がん剤およびPARP阻害剤の薬剤耐性にガレクチンー3が関与することが証明された。 薬剤耐性に関与する分子メカニズムを解明するため、microarrayを用いた最新のバイオインフォマティクス解析した結果、LNCaP-Gal-3細胞ではPI3K-Aktシグナルが増強し、Aktのリン酸化が促進された。また細胞増殖に関与するTGF-betaシグナルも増強しEGFやTGF-betaの発現が増強していた。さらにPARP関連因子でアポトーシスに関与するPARP14の発現も増強していた。 この研究で、去勢抵抗性前立腺癌での重要な治療の1つであるタキサン系抗がん剤と、将来的に臨床応用が期待されるPARP阻害剤の薬剤耐性にガレクチン-3が関与することが示され、ガレクチン-3の発現に関連する候補分子が同定された。この結果からガレクチン-3をターゲットにした治療の有用性が示され、去勢抵抗性前立腺癌治療薬の感受性を高める効果が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で、実験計画の「治療抵抗性におけるガレクチン-3の関与と分子メカニズムの解明」の前立腺癌の項目のうち、前立腺癌細胞に対するタキサン系抗がん剤による化学療法およびPARP阻害剤耐性にガレクチン-3が関与することが証明された。またガレクチン-3の治療抵抗性のメカニズムをmicroarrayで網羅的に遺伝子解析を行い、様々なキー分子を同定した。これらの成果は2019年米国泌尿器科学会で発表する予定であり、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、腎細胞癌および尿路上皮癌でガレクチン-3の関与を検討していく予定である。すなわち、腎細胞癌ではVEGF受容体阻害剤耐性に及ばすガレクチン-3の作用メカニズム、主に血管新生に及ぼす影響を詳細に検討する予定である。また尿路上皮癌ではゲムシタビンおよびシスプラチンによる化学療法耐性に及ばすガレクチン-3の作用メカニズムを解明する予定である。 さらにガレクチンー3の治療応用のため、われわれが既に構築している数種類のガレクチンー3のブロッキング抗体とsiRNAを使用し、去勢抵抗性前立腺癌および腎細胞癌、尿路上皮癌に対する有用性をin vitroおよびin vivo(マウス転移モデル)で検討する予定である。また、ガレクチンー3の発現抑制により、ホルモン療法(前立腺癌)、放射線療法(前立腺癌、腎細胞癌、尿路上皮癌)、化学療法(前立腺癌、腎細胞癌、尿路上皮癌)、分子標的薬治療(腎細胞癌)の際の相加、相乗効果も検討する予定であり、ガレクチンー3の治療応用を目指したい。
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