研究課題/領域番号 |
18K09146
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
魏 民 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (70336783)
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研究分担者 |
加藤 実 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30711684)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Oncomodulin / 尿路上皮がん / 浸潤能 |
研究実績の概要 |
in vitroおよびin vivo試験系を用いてOncomodulin (OCM)の表現型解析及び機能解析を行った。本年度に得られた主な成果は以下の通りである。1) OCMが発現していないヒト膀胱癌株に対してSleeping Beautyトランスポゾン法を用いてOCM過剰発現亜株を樹立した。本株を用いた解析結果として、OCM発現増加により細胞増殖能及び遊走能が亢進することが明らかとなった。さらに、マイクロアレイ解析によりOCMの発現亢進により発現変動した遺伝子群を同定した。遺伝子群には、増殖および浸潤に関連する遺伝子が多数含まれているが、そのプロファイルはヒト尿路上皮初代細胞を不死化した細胞で同定したOCM標的遺伝子のプロファイルと異なることから、OCMは発がん過程の段階によってその機能が異なることが強く示唆された。2) OCMをTet-On発現誘導系を用いて導入したヒト尿路上皮初代細胞の不死化細胞について、免疫沈降法によりOCM-Flagに結合するタンパク質を濃縮後、mass spectrometry解析し、OCM結合タンパク質の候補を同定した。現在、同定された上位タンパク質については、IP-WB解析により、OCMとの結合を確認している。3) 雌雄のOCMホモ欠損ラット及び野生型ラット合計240匹を作成した。膀胱発がん物質であるBBNを8週間飲水投与し、その後無処置で飼育している。実験開始後24週に解剖し、膀胱腫瘍の発生について病理学的解析を行う予定である。現在動物試験を順調に進行中である。4) 筋層浸潤性膀胱癌52例についてOCM免疫染色を実施し、そのうち30例(57.7%)でOCM発現が認められ、ヒト膀胱かんにおいてもOCMの過剰発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OCM欠損ラットを用いた膀胱発がん性試験が順調に進行中である。計画通り来年度に尿路上皮発がん過程におけるOCMの機能を個体レベルで評価する予定である。また、OCMの包括的機能解析に必要なin vitro試験系を樹立に成功した。膀胱がん細胞おけるOCMによる表現型変化の確認とOCMの標的遺伝子候補を同定したことで、OCMの機能に関する情報が蓄積しつつある。さらに、ヒト膀胱かんにおいてもOCMの過剰発現を確認したことで、OCMの臨床病理学的意義を評価する準備も整うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.OCM欠損ラットを用いた膀胱発がん性試験について病理学的解析を行い、膀胱発がん感受性を明らかにし、尿路上皮発がん過程におけるOCMの機能を個体レベルで評価する。 2.大阪市立大学付属病院で外科的切除が行われた膀胱癌症例(解析予定:300例)に対してOCM染色を完了させる。発現分類を行なった後、再発、浸潤、予後等臨床学的各種パラメータとの相関について検討し、OCMの臨床病理学的意義を明らかにする。 3.前年度に引き続き、OCM結合タンパク質の同定を行う。 4.ヒト尿路上皮初代細胞の不死化細胞について、カルシウム結合ドメインをアミノ酸置換することでカルシウム結合能を低下させた変異体を作製し、OCMの細胞内分子機構はその既知機能であるカルシウム結合能に依存するか否かを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者である清野先生及び山野先生からOCMの遺伝子導入に使用した試薬の一部を提供いただいた。また、校費でマイクロアレイ解析の一部費用を充当させた。 使用計画として次年度に実施する予定のラット膀胱発がん試験の病理学的解析及びマイクロアレイ解析等に使用し、計画通り研究を遂行する予定である。
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