研究課題/領域番号 |
18K09148
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
淡路 健雄 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60297546)
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研究分担者 |
田丸 文信 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (70337541)
梶原 健 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80286103)
平澤 明 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (70242633)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多価不飽和脂肪酸 / 精子 / 三量体Gタンパク質共役型受容体 / GPR120 |
研究実績の概要 |
我々は、これまで継続して新規三量体G蛋白共役型受容体であるGPR120のリガンドが多価不飽和脂肪酸であることを決定し、培養細胞系・遺伝子改変動物の作成 を通じて多価不飽和脂肪酸のGPR120を介する生体での機能を明らかにしてきた。近年、この受容体の主たるリガンドである多価不飽和脂肪酸であるDHA・EPAが精 子機能の発現に重要な役割を果たしており、そのDHA/EPAの作用はGPR120を介していることが示唆されている。このGPR120の精子に対する生理機能を明らかにす るため実験を行った。 昨年度に本研究で作成したウサギ抗GPR120抗体の評価を継続して行っている。強制発現細胞における免疫組織染色において本研究で作成したウサギ抗GPR120抗体 のマウス型はすべて陽性所見を見出すことができた。しかしながら、ウエスタンブロット解析においては検出に十分な感度・特異性が認められず、これまで報告 されている三量体G蛋白共役型受容体の検出と同様な問題が見いだされた。また、現在の精子単離調製条件においては精子におけるGPR120アゴニスト投与による カルシウム反応の検討においては明らかな陽性反応が認められす今後の検討が必要であると判断した。 今後、GPR120の蛋白としての精子での発現の有無の確認を(1)ウエスタンブロット法の最適化による検出力・特異性の向上をおこなう(2)本研究課題で作成した抗体 を用いた、GPR120KO・トラスジェニックならびにWildマウスによる精巣における免疫組織染色・フローサイトメトリーによる検出法の検討(3)精子パッチクラ ンプ法におけるGPR120アゴニスト投与によるカルシウム電流の変化についておこなう。また、マウス精子標本調整法を見直し、精子機能における運動・カルシウ ム反応性について再度仔細に検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
既報のマウス精子における機能的に推定されている多価不飽和脂肪酸受容体の発現の確認は必須事項である。本研究において野生型マウス(C57 BL 6/J)精子におけるGPR120受容体蛋白の免疫組織学的・生化学的検出が現状で達成されていない。三量体Gタンパク質受容体の生体由来のサンプルからの検出が困難であることは知られている。これは三量体G蛋白共役型受容体の抗体の作成は困難であり、良質の抗体ができにくい事による。本研究においては検出力の高い新規抗体の作成を抗体作成部位・作成方法の 検討を十分な時間をかけて行ってきた。GPR120安定高発現培養細胞において作成した抗体により生化学的に検出できることは確認したが、培養細胞においても再現性の高い抽出条件が決定できていない。今後の研究を遂行する上で、GPR120の発現を明確にする必要がありるため、検出法の確立は急務である。しかし、受容体蛋白抽出法ならび免疫組織学的・生化学的検出法の条件検討に想定以上に時間がかかっており、研究の進展がやや遅れている。 機能的検出も、安定な検出が出来ておらず、精子調整により反応性が異なることが知られており、調整法を含め検討を遂行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を遂行する上で、野生型マウス(C57 BL 6/J)精子における多価不飽和脂肪酸受容体GPR120の発現の有無を明確にするのは絶対に必要である。現在、既存の抗体において過剰発現をしているGPR120トランスジェニックマウス(C57 BL 6/J)の精子においては有意な発現を認めているが、野生型マウス(C57 BL 6/J)においては明確な発現は検出できていない。2018年度に作成した新規抗体の評価を継続して行い野生型マウス精子におけるGPR120の発現を明確にする。このため、GPR120の検討経験が豊富な 研究者を共同研究者に検出法の改善ならびに本研究で作成した抗体の評価を継続して行ってもらう予定である。また、実験動物の準備の都合上実施できなかった パッチクランプ法による野生型マウスにおけるカルシウム電流に着目した薬理学的検討を行い薬理学的な検出を並行して行う予定である。 また、精子調整法による反応性が異なることが知られており、調整法の改善をおこないGPR120アゴニスト投与による精子カルシウム反応の検討と運動性の変化を 検討する。またGPR120はβアレスチンを介する細胞内情報伝達系に対しても影響を与えることが知られており、精子を用いβアレスチンの下流にあるMAPKのリン酸化を指標にGPR120のシグナル系が精子において機能しているかを評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症蔓延による影響により、充分な研究が行えなかった。また業者のキャンペーンなどの利用により消耗品に対する必要経費が少なくなり当初予定した研究費の節約がなされた。今年度も所属研究室からの補助により、動物飼育費など研究室予算から支出したため研究費に余裕が生じた。 本年度は、繰り越した予算より、培養実験試薬代・生化学実験試薬代・研究用コンピューターソフト代などに繰り越した予算を利用する予定である。
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