研究課題/領域番号 |
18K09149
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮崎 保匡 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (80445329)
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研究分担者 |
小坂 威雄 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30445407)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血管新生 / がん微小環境 / 免疫応答 / バソヒビン / 免疫チェックポイント阻害剤 / 抗体療法 / 血管新生阻害剤 / 癌化 |
研究実績の概要 |
① 血管内皮細胞株(HUVEC)におけるVasohibin-1(VASH1),Vasohibin-2(VASH2)の発現をウェスタンブロット、細胞蛍光免疫染色にて検討した。VASH1は血管内皮細胞に発現していたが、前立腺癌細胞株(DU145、PC3、C4-2、LNCaP)では殆ど発現していなかった。しかし、VASH2は血管内皮細胞と前立腺癌細胞株(DU145、PC3)で強く発現を認めた。この結果から、癌血管新生においては癌細胞自体もVASH2を発現しており、VASH1とVASH2は血管内皮細胞で発現が認められることが判明した。 ② VASH2の強く発現を認めたHUVECやDU145、PC3に抗VASH2抗体を投与したところ細胞増殖抑制効果を認めた。細胞増殖抑制は抗体の濃度依存的に起こり、濃度によっては抗体を作用させてから24時間後からも認められることが判明した。VASH2を阻害することによって直接的な癌細胞の増殖抑制を認めることが判明した。また、血管内皮細胞に対しても細胞増殖抑制効果を認め、血管新生を阻害する可能性があることが判明した。抗VASH2抗体と同様サブタイプの抗体を同様の濃度でこれらの細胞に投与しても特に細胞増殖抑制効果を認めなかったことから、VASH2が癌微小環境において癌の治療標的となり得ると考えられた。 ③ 前立腺癌細胞株のマウス皮下腫瘍モデルを作成し、抗VASH2抗体を投与したところ、皮下腫瘍の著しい腫瘍体積縮小を認めた。腫瘍内の血管密度は減少しており、癌細胞だけでなく血管新生も抑制していることが判明した。 ④ 前立腺癌細胞株(DU145、PC3)に対して抗VASH2抗体を投与を行い、マイクロアレイ解析にて発現が変動した遺伝子群を解析して抗VASH2抗体によって変化が起きる遺伝子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療標的となり得る分子の同定が進んでおり、実際に治療応用として抗体療法が効果がある可能性が得られたため。 現在臨床でも行われている、免疫チェックポイント阻害剤のような抗体を用いた治療と同様に、標的となる分子に対して抗体を投与すると癌細胞の細胞増殖と血管新生を同時に阻害する可能性のある治療の開発につながる可能性があるため。
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今後の研究の推進方策 |
前立腺癌細胞株と血管内皮細胞株による検討を行って、発現遺伝子の変化を同定して、VASH2の発現制御のメカニズムをさらに探ることが必要と考えられる。 そのためにはマイクロアレイ解析の結果を検討して、パスウェイ解析を行い、発現変動の大きい遺伝子の動態から、VASH2の発現調節についてさらに検討することが必要と考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究用試薬において以前購入した共用品の試薬が使用可能であったため、試薬を新たに購入しなかったため。経費として本年度は未請求となった。次年度には試薬が新たに必要となるため、次年度に使用する額として請求する予定である。
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