研究課題/領域番号 |
18K09156
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
堀田 記世彦 北海道大学, 大学病院, 助教 (90443936)
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研究分担者 |
村上 正晃 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (00250514)
岩見 大基 北海道大学, 大学病院, 講師 (80581115)
篠原 信雄 北海道大学, 医学研究院, 教授 (90250422)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腎移植 / 長期成績 / 慢性抗体関連型拒絶反応 / 早期診断 |
研究実績の概要 |
腎移植の短期成績は飛躍的に向上していが、長期的にはドナー特異的抗体による慢性抗体関連型拒絶反応(CAMR)により移植腎機能廃絶となる症例が多く、この克服が長期成績の向上に必要不可欠である。しかし、CAMRに対する有効な治療法は未だ確立していない。当研究の目的は、CAMRとなりうる患者を未然にもしくは可能な限り早期に発見する診断法を開発することである。当研究は3つからなり昨年度の研究実績は以下の通りである。 1.パラフィン移植腎生検標本を用いたCAMR早期診断関連遺伝子の検索:経時的に採取したプロトコール移植腎生検のパラフィン切片100検体を共同研究者のマサチューセッツ総合病院に遊走子遺伝子解析中である。 2.慢性抗体関連型拒絶反応(CAMR)早期診断のための尿中バイオマーカーの検索:CAMRの診断となった移植腎生検組織を免疫染色したところ正常腎組織に比べORM1発現の亢進を認めたことから、尿中ORM1に注目した。CAMRと組織学的に正常である患者での尿中ORM1を比較したところCAMR群で尿中ORM1濃度が有意に上昇していた。さらに他の慢性障害である間質の繊維化や尿細管の萎縮(IF/TA)や免疫抑制剤であるカルシニューリン阻害剤の腎毒性の患者群に比べてCAMR群の尿中ORM1の濃度が上昇していることが確認できた。これにより、尿中ORM1が慢性障害の中でもCAMR患者に特異的に上昇している可能性がありバイオマーカーの臨床応用への可能性が見出せた。 3.末梢血リンパ球反応による早期診断法の開発:30症例につきCFSE/MLR assayを行った。結果、腎機能が正常で病理学的にも問題ない患者においてはCD8の反応が認めないが、慢性抗体型拒絶反応の患者ではドナーに対するCD8の反応が認める傾向にあり、CAMRを早期に診断する可能性は見出せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3つの研究からなり、それぞれの昨年度の進捗状況は以下の通りである。 1.パラフィン移植腎生検標本を用いたCAMR早期診断関連遺伝子の検索…CAMR群、正常群それぞれ10例ずつ計20症例につき移植前、移植後1、3,5,7年以降のそれぞれ5検体移植腎検体を共同研究者であるマサチューセッツ総合病院に郵送し、遺伝子解析中である。 2.慢性抗体関連型拒絶反応(CAMR)早期診断のための尿中バイオマーカーの検索…上記で示した様にCAMR患者において尿中のORM1濃度が特異的に上昇していることが見出せた。 3.末梢血リンパ球反応による早期診断法の開発…上記で示した様にCFSE assayによりCAMRを早期に診断する可能性は見出せた。当初レシピエントのPBMCをレスポンダーに使用して実験を行っていたが、反応が少なく、CAMR患者と正常患者の違いを見出すことができなかった。そこで、PBMCからT細胞を分離してレスポンダー使用する様にプロトコールを変更すると、レシピエントT細胞のドナーに対する反応をより顕著に検出でき、CAMR患者と正常患者での反応の違いが鮮明になった。現在、この方法で症例を増やしている段階である。(現状で30例施行)
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今後の研究の推進方策 |
1.パラフィン移植腎生検標本を用いたCAMR早期診断関連遺伝子の検索…本年度は現在解析中のデータと、臨床経過、病理所見との関係をまとめる。具体的には本年6月にボストンにて共同研究者との会議を開催し、データの確認と今後の方針について話し合う予定である。 2.慢性抗体関連型拒絶反応(CAMR)早期診断のための尿中バイオマーカーの検索…尿中のORM1がCAMR患者に特異的に上昇していることが判明したので、今後CAMRとなった患者に対して発症前の尿を測定し早期診断が可能で有るか検討する。 3.末梢血リンパ球反応による早期診断法の開発…T cellをレスポンダーしたCFSE/MLR assayの症例をさらに増やす。現状は30例施行しているが、100例を目標に研究をすすめる。この結果と、移植腎機能、ドナー特異的抗体の有無、移植腎生検の所見との関連を検討し、この検査法がCAMRの早期診断に有用であるかの妥当性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.パラフィン移植腎生検標本を用いたCAMR早期診断関連遺伝子の検索…追加の検体の郵送費が必要 2.慢性抗体関連型拒絶反応(CAMR)早期診断のための尿中バイオマーカーの検索…尿中のORM1の測定(ELISA)に必要な消耗品(抗体やその他の試薬など)の購入費が必要 3.末梢血リンパ球反応による早期診断法の開発…CFSE assayを行うに際して、P血液からPBMCの分離、さらにT cellへの分離、細胞培養の培地、FCS、フローサイトメトリーで使用する抗体などの購入費が必要。その他、上記の成果を学会で発表するための旅費が必要で有る。
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