研究課題
前立腺癌は臓器内に多発する特徴を持つが、多発する癌病巣の中に、転移能を有し、予後を規定する細胞集団である病巣(Index cancer)があり、そのIndex cancerを標的化して治療すれば前立腺全体を治療する必要がないという仮説を立てた。本研究の目的は、転移を有する前立腺全摘除術標本の多発性癌病巣の細胞と転移部位の癌細胞とを用いて網羅的にDNAのメチル化解析を行い、転移の源となる予後規定病巣(aggressive cancer)と即時治療を要さない病巣(Non aggressive cancer)とに分類できるか否かを特定することである。また、臨床の現場で全摘標本を解析することは不可能であるので、前立腺生検組織を用いてDNAメチル化のパターンを解析できることを証明することが第二の目的である。すなわち、前立腺針生検組織を材料にして臓器内に多発する癌病巣の中から予後規定病巣を特定できることを証明することである。前立腺全摘標本を用いて複数の癌病巣からDNAマイクロダイゼクションにより、DNAメチル化解析を施行し、さらに前立腺全摘の際に施行したリンパ節組織に転移を認めた標本からも同様にDNAメチル化解析を行い、これらを比較した。その結果、複数の癌病巣の中でリンパ節転移のメチル化パターンに類似した病巣が存在し、これらが前立腺内に多発する癌病巣のうち、予後を規定する病変であることが示唆された。