研究課題
ステロイド合成のために、コレステロールをミトコンドリア内膜に輸送する蛋白質StARに着目した。これまで、StARと前立腺癌の発癌、進展、ホルモン依存性に関する報告はほとんどない。本研究では、AhRを介したStAR蛋白質の発現調整機構の解明とStARを標的とする治療の可能性を研究する。ヒトStARに対するマウスモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology社)を用いて、ヒト前立腺癌におけるStAR蛋白質の発現を検討した。本抗体はすでにWesternblottingで用いた抗体と同様であり、モノクローナル抗体のためStARに対する特異性は極めて高い。StARは前立腺癌培養細胞であるLNCaPや22Rv-1細胞で発現しており、その発現は前立腺癌の浸潤に関わる転写因子Aryl Hydrocarbon Receptor(AhR)を介していた。前立腺癌細胞株を用いた検討では、AhRのシグナルは増殖能に変化を及ぼさなかったが、浸潤能に対し抑制的に作用した。さらに、StAR蛋白質の発現抑制は転写因子であるAhRを介していることが、AhRの阻害物質CH223191を用いた検討で見い出している。StAR遺伝子の発現制御による前立腺癌細胞の浸潤、増殖の影響を検討し、今後、これら前立腺細胞株を用いて、テトラサイクリンによるStAR蛋白質の発現のオン、オフを行い、in vitroにおいて、細胞増殖能や浸潤能を検討する。
3: やや遅れている
テトラサイクリンで誘導されるStAR遺伝子の下流にIRESを用いてGFPを連結したレトロウィルス発現ベクターを感染させ遺伝子導入するシステムの構築に時間を要している。
今後、これらのGFPを導入された前立腺細胞株を用いて、以下の検討を行う。テトラサイクリンによるStAR蛋白質の発現のオン、オフによりin vitroにおいて、MTSアッセイによる細胞増殖能や浸潤能を検討する。前立腺癌細胞をsoft agar上で培養し、colony形成能の検討とクローン化を行う。また、in vivoへの実験系へ推進していく。
研究結果の学会報告のための旅費を使用しなかったため。今後、前立腺細胞株を用いて、in vivoへの実験系を検討する。次年度、実験試薬ならびに旅費に30年度残金は233,782円と31年度1,100,000円 合計1,333,782円を使用する。