研究実績の概要 |
去勢抵抗性を獲得した前立腺癌細胞において、癌細胞自ら様々なテストステロン合成に関わる酵素を発現し、テストステロンを産生、癌細胞自身の増殖、悪性化に関与していることが分かってきている。本研究では、前立腺癌細胞において、コレステロールをミトコンドリア内膜に輸送し、テストステロン合成の律速段階を形成するsteroidogenic acute regulatory (StAR)蛋白質に着目し、StAR蛋白質の発現調整機構および前立腺癌細胞の去勢抵抗性獲得機構の解明を試みる。StAR発現を調整する転写因子として、Aryl hydrocarbon receptor (AhR)を同定し、前立腺癌浸潤機構の関与を解明報告してきた(Ide H. et.al.,Hum Cell 30:133-139,2017)。前立腺癌細胞株を用いた検討では、AhRのシグナルは増殖能に変化を及ぼさなかったが、浸潤能に対し抑制的に作用した。さらに、StAR蛋白質の発現抑制は転写因子であるAhRを介していることが、AhRの阻害物質CH223191を用いた検討で見い出した。AhRの転写活性は、xenobiotics-responsive element (XRE)-Luciferase plasmidsを用いて、Luciferase活性にて評価することができる。AhRのライガンドである2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) (Accustandard Inc. USA cat:D-404S) や 3-Methylcholanthrene (3MC)を用いて、AhRの転写活性とStAR蛋白質の発現を検討できる。StAR蛋白質発現時の前立腺癌細胞のアンドロゲン依存性の解析と分子プロファイリングのため、siRNAを用いたStAR蛋白質の発現のオン、オフにより、前立腺表面マーカー発現の検討とテストステロン依存性等について、MTSアッセイ系を用いて増殖能を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究結果の学会報告のための旅費を使用しなかったため。今後、前立腺細胞株を用いて、in vivoへの実験系をさらに検討する。次年度、実験試薬及び旅費として平成31年度(令和1年度)残金800,898円と令和2年度交付金780,000円(内間接経費180,000円)を合計した1,580,898円を使用する。
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