研究実績の概要 |
本研究は、腎細胞癌ND1変異と非再発生存率の相関をみた臨床的検討、腎細胞癌手術検体におけるND1遺伝子発現量およびタンパク発現量をみた基礎的検討を基盤として、腎細胞癌の増殖、転移および癌細胞内のROS過剰蓄積におけるND1サブユニットの役割の解明を目的とする。本年度は、異なる腎細胞癌細胞株におけるND1遺伝子変異と遺伝子発現の比較を行うため、RCC4/vector alone, RCC4/VHL, ACHN, Caki2, 786-Oの5種の細胞株を用いて、サンガーシークエンスおよびリアルタイムPCRを行った。シークエンス結果は、リファレンス配列と比較した。リファレンス配列はアクセッションナンバーNC012920とAF346985を使用した。5種類の細胞株のうちRCC4/vector alone, RCC4/VHL, ACHN, Caki2に遺伝子変異を認め、RCC4/vector aloneとRCC4/VHLにT3398CおよびA3796Gの共通の変異を認め、ACHNとCaki2にA3480Gの共通の変異を認めた。Mitomap(https://www.mitomap.org/foswiki/bin/view/Main/WebHome)を用いたデータベース検索で、 A3480Gは大腸結腸癌で同様の変異の報告を認めたが、T3398CおよびA3796Gに関しては癌との関連報告は認めなかった。5種の細胞株を比較したリアルタイムPCRの結果では、ACHNの遺伝子発現量が最も多く、Caki2の発現量が最も少ないことが分かった。残りの細胞株に関しては同程度の発現量であった。腎細胞癌におけるND1遺伝子変異および発現増加が浸潤、転移といった癌の悪性挙動に与える影響の足掛かりとなる成果を得られた。
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