研究実績の概要 |
転移性腎細胞癌の生存率向上には、治療の新たな標的が必要である。遺伝子解析技術の進歩により、腎細胞癌核遺伝子変異プロファイルは明らかになりつつあるが、ミトコンドリアゲノムは盲点となっている。本研究は、腎細胞癌ND1変異と非再発生存率の相関をみた臨床的検討、腎細胞癌手術検体におけるND1遺伝子発現量およびタンパク発現量をみた基礎的検討を基盤として、腎細胞癌の増殖、転移および癌細胞内のROS蓄積におけるND1サブユニットの役割解明を目的とする。 前年度までに5種類の腎癌細胞株(786-O, RCC4/vector alone, RCC4/VHL, ACHN, Caki2)のサンガーシークエンスおよびリアルタイムPCRを行い、ND1変異とND1発現量を確認した。遺伝子変異はRCC4/vector alone, RCC4/VHL, ACHN, Caki2に認めた。また、各細胞株間でND1発現量に差があることも確認した(ND1発現量:ACHN>Caki2)。MT-ND1 siRNAを用いて、786-O, RCC4のND1ノックダウンを試みたが、十分なダウンレギュレーションを得られなかった。そのため、研究計画を一部変更し、抗がん剤および分子標的薬を用いて、上記腎癌細胞株のND1発現量の変化をスクリーニングした。786-OにSorafenib(20μM)を添加した786-O(Sorafenib+)で、約70%のND1発現量の低下を認め、タンパク質レベルではウエスタンブロットで約25%の発現低下を認めた。ROS検出試薬で処理した786-O(Sorafenib+)と786-O(Sorafenib-)の蛍光強度をArrayScanで測定した結果、786-O(Sorafenib+)でROS蛍光強度の上昇を認めた。
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