研究課題/領域番号 |
18K09183
|
研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
佐藤 全伯 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 泌尿器科学, 講師 (00296675)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬 / ヒストンアセチル化 / HIVプロテアーゼ阻害薬 / AMPK / HMG-CoA還元酵素阻害薬 / 小胞体ストレス |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞内薬物代謝酵素CYP3A4や薬物排出ポンプP-glycoproteinの抑制作用を持つ薬剤や、ヒストンアセチル化を増強させる可能性がある薬剤をヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(HDACi)と併用することで効率的にヒストンアセチル化を誘導し、膀胱癌細胞を死滅させる方法を追究している。今年度は、まずHDACiであるvorinostatとCYP3A4阻害作用を持つHIVプロテアーゼ阻害薬ritonavirの併用についての検討を開始し、昨年度のpanobinostatの併用と同様に、相乗的なアポトーシス誘導効果と殺細胞効果が確認された。一方で、我々はプロテアソーム阻害薬ixazomibがヒストンをアセチル化することに注目し、ixazomibとvorinostatの併用についても研究を進めた。併用は、相乗的にヒストンアセチル化と小胞体ストレスを誘導するとともにAMP-activated protein kinase (AMPK)の発現を増強し、mTOR経路を阻害した。また、この小胞体ストレス誘導をcycloheximideを用いて阻害すると、ヒストンアセチル化とアポトーシス誘導能は有意に抑制され、本併用における小胞体ストレス誘導の重要性が示された。さらに我々は、HMG-CoA還元酵素阻害薬であるsimvastatinがAMPK活性化を介してヒストンをアセチル化することに着目し、simvastatinとHDACiであるromidepsinの併用についての研究も開始した。併用はin vitroで相乗的な殺細胞効果を示す一方で、in vivoにおいても、明らかな体重減少などの副作用なく有意に腫瘍の増大を抑制した。メカニズム面においては、これまでに相乗的なヒストンアセチル化、小胞体ストレス誘導、さらにはreactive oxygen speciesの産生増加が示されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はHDACiとしてvorinostatとromidepsinを、併用薬としてritonavir, ixazomibおよびsimvastatinを用いて研究を行った。どの併用でも相乗的な殺細胞効果を認め、メカニズム面においても、予想通りのヒストンアセチル化の促進に加え、小胞体ストレス誘導、mTOR経路の抑制、reactive oxygen speciesの産生増加を証明することが出来ている。更に、simvastatinとromidepsinの併用においては、in vitroのみならず、in vivoにおいても、有意な腫瘍増大抑制効果を示すことが出来た。このように当初の仮定通り、HDACiの作用を他の薬剤併用によって増強することに複数の組み合わせで成功しており、研究は順調に進行しているものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
Vorinostatとritonavirの併用、simvastatinとromidepsinの併用については、メカニズム面での解析をさらに推進する。また新たに、vorinostatとプロテアソーム阻害薬oprozomibの併用についての研究を開始する。さらに、新規プロテアソームHDAC同時阻害薬であるRTS-V5の作用増強について、HIV protease阻害薬他との併用を行い、その作用メカニズムを追究する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由: 予定していたより効率的に研究が進んだため、試薬の使用量が少なく、また、動物実験での使用動物数が少なかったため、次年度使用額が生じた。COVID-19の世界的な流行により、2020年の一部海外学会がvirtual開催となり、旅費等への使用がなかったことも一因と考えられる。
使用計画: 引き続き、試薬および実験動物の購入に充てる。
|