研究課題/領域番号 |
18K09189
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
今村 哲也 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (00467143)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 間葉系細胞 / 立体組織 / 糖尿病 / GKラット |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病は、新たな国民病と位置づけられる疾患である。しかし、慢性腎臓病において、慢性腎不全に至ったときの腎代替療法には、多くの課題が山積している。本研究は、慢性腎不全への移行段階での病期ステージの進行を抑制して、正常な腎機能へと回復させることを目的とした新規治療開発の基礎研究を行う。本研究では、骨髄由来細胞と新規の細胞の足場素材、ゼラチンシートを組み合わせた積層型細胞シートを作製する。腎機能が低下した糖尿病ラットの腎臓に積層型細胞シートをパッチ移植することによって、腎組織が再生して腎機能が改善するのか検討を行う。同時に、積層型細胞シート移植による腎臓の再生機序を解明する。また、本研究成果を実用化技術として確立する中・大型動物実験へ移行するための準備実験を行う。本研究は、今後の慢性腎臓病の新規治療開発研究における重要な基盤を築くものである。 本年度は、糖尿病モデルラットの片腎を摘出して、高脂肪含有飼料と塩含有飼料の混合飼料飼育することによって、腎機能障害が発症する傾向があることを確認した。また、新規に考案した積層型の細胞シートの作製条件、および、ラット腎への移植手技(腎被膜下へのパッチ移植法)を確立した。 これらの成果をもとに、積層型細胞シートを腎機能障害が発症したラットの腎被膜下へのパッチ移植を試みた。移植4,8週後の尿中タンパク、血中クレアチニン、尿素窒素などの腎機能を評価する項目において、積層型細胞シート移植したラットは、経時的な腎機能の悪化が抑制傾向が認められ、無細胞シートを利用した対照群と比較して、回復する傾向を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、片腎を摘出した後、高脂肪含有飼料と塩含有飼料の混合飼料で4週間飼育を行った糖尿病モデルラットに対して、新規の積層型細胞シートを腎被膜下にパッチ移植した。対照群には、無細胞シートを同様にパッチ移植した。移植4、8週間後、積層型細胞シート移植群では、対照群と比較して腎機能の悪化が抑制される傾向を確認した。現在、実験動物数を増やすために実験を繰り返している段階である。また、同時に、腎機能回復の機序として、積層型細胞シート移植による腎組織の改善が関連しているのかどうか評価する組織学的解析を開始した。以上から、本研究は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、腎機能障害を呈する糖尿病モデルラットの再現性のある作製条件の確立、積層型細胞シートの安定的な作製方法の確立ができた。さらに、積層型細胞シートのラット腎への移植方法も確立した。したがって、次年度は、統計処理が可能になる実験動物数になるまで実験を繰り返すとともに、組織学的解析を中心とした評価により、腎機能回復における機序を明らかにする。また、実用化技術へ向けた基盤の構築を進める。
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