研究課題
高齢者は免疫能の低下等により感染症に罹患しやすいが、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症もその一つである。尿路感染症は採血検査や画像検査に加えて自覚症状や尿検査よって診断されるが、高齢者では自覚症状が明確でない場合も多く確定診断に迷うこともある。さらに尿路感染症においては治療を要しない無症候性細菌尿の存在が尿路感染症の診断を困難にさせている。本研究では無症候性細菌尿と症候性の尿路感染症を区別する方法の確立を目指し、尿中のエクソソームに着目した。エクソソームは直径約40-150nmの膜小胞であり、タンパクや核酸を含み細胞外に分泌され、その表面や内部には元の細胞の表面タンパクや内容物を含んでいるため、分泌元の細胞の状態を反映していると考えられているため多数のバイオマーカーとしての報告がある。本研究では培養細胞(SV-HUC-1、THP-1)と大腸菌を用いた尿路感染モデルにてエクソソームの解析を行ったところ、大腸菌の刺激によりAkt、ERK、NF-kBといった細胞内のシグナル伝達を担うタンパクや転写因子、エクソソームのマーカーであるCD9が増加することが明らかとなった。また尿中エクソソームをバイオマーカーとして利用するためには、簡便性とエクソソームの高い精製度を両立させる必要があるが、Tim4を用いたホスファチジルセリンに対するアフィニティー法で精製した尿中エクソソームのAktとCD9の発現量が無症候性細菌尿と比較して尿路感染症では有意に上昇していることが明らかなとなり、尿中エクソソームのAktやCD9が尿路感染のあらたなバイオマーカーとなる可能性を見出した。
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