研究課題
本研究では、まず膀胱癌患者の尿中に含まれる免疫複合体を検出・解析した結果から、尿中のセルロプラスミン濃度が、非筋層浸潤性膀胱癌において、病理学的特徴や予後と有意に関連することを示した。そして、最終年度には、これらの結果を基盤として、尿中セルロプラスミン複合体以外にも、serum albumin、fibrinogen γ chain、hemoglobin subunit α、hemoglobin subunit β、そして、 fibrinogen β chainを含む免疫複合体が膀胱癌の発生や進展と有意に関連することを見出した。さらに、膀胱癌組織におけるセルロプラスミンの発現を解析し、尿中に存在するセルロプラスミンに加えて組織に発現しているセルロプラスミンも膀胱癌の病態に有意な役割を果たすことを明らかにした。一方、膀胱癌の細胞株を用いた検討では、その培養上清中のセルロプラスミン濃度が必ずしも、それら細胞株の増殖やアポトーシス、さらには、各種抗がん剤の抗腫瘍効果と直接的に関係しないことがわかった。現在、このようなin vivo研究とin vitro研究で得られた結果に差異が見られる原因について分子生物学的な解析を行っているが、膀胱癌組織において癌細胞を取り巻く環境、例えば、酸化ストレスや免疫担当細胞、さらに、線維芽細胞などの働きが、セルロプラスミンの病理学的役割に影響を与えている可能性を推測している。また、化学発癌マウスモデルの組織における解析においては、ヒトの癌組織における結果と類似する部分もあると同時に、ヒト組織においては浸潤部分に強くセルロプラスミンの発現を認めるのに対して、マウス組織ではこのような特徴を認めないなど差異も見られた。このように、癌細胞および周辺環境の変化がセルロプラスミンの病理学的役割へ影響を与える可能性が、この実験系でも示された。
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In Vivo
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