進行性尿路上皮癌の予後は不良であり、再発・転移症例に対してGemcitabine + Cisplatin (GC)療法が1stライン治療であるが、治療反応が乏しい症例や治療後に再発をきたす症例も少なからず存在する。これらの症例に対して、有効な2ndラインの治療法は確立されていない。本研究の目的は、「癌抑制型マイクロRNA」の抗腫瘍効果をin vivoにおいて証明し、マイクロRNAを用いた新規核酸治療法の確立を加速させる事である。具体的には、多機能ドラッグデリバリーシステムとして注目されている高分子ナノミセルに癌抑制型マイクロRNAを搭載し、それの腫瘍細胞内へ導入効率や抗腫瘍効果を検討することである。また、最近、細胞外小胞の一つとしてエクソソームが注目されているが、本年度はエクソソームとマイクロRNAを用いた新規核酸治療法の確立のアプローチを試みた。 本年度の実績として、エクソソーム内に癌抑制型マイクロRNAとして知られているmiR-1を発現させ、それを別な細胞に添加することでエクソソームmiR-1が細胞内に取り込まれ、細胞内のmiR-1の発現が10倍から40倍に増加することを確認した。更にエクソソームmiR-1を添加した細胞はコントロール細胞と比べて、細胞の増殖・遊走・浸潤能が抑制された。また、エクソソームmiR-1を添加した細胞を用いてRNAseqを行った結果、多くの遺伝子の発現が変化していることを確認した。そして、それをマウスに投与することで、皮下に形成した腫瘍がコントロール群と比べて縮小することを確認した。これらの結果より、in vivoにおける「癌抑制型マイクロRNA」の抗腫瘍効果の可能性を示すことができた。
|