研究課題/領域番号 |
18K09200
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
伊藤 靖彦 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (90293430)
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研究分担者 |
安井 孝周 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (40326153)
岡田 淳志 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (70444966)
安藤 亮介 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30381867)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 尿路結石形成 / cyclophilin D / ミトコンドリア / cyclosporine A / 結石モデル動物 |
研究実績の概要 |
私たちは結石モデル動物を用いて、尿路結石形成の過程において腎尿細管細胞内のミトコンドリア傷害が重要な因子であると証明した。ミトコンドリア傷害は細胞が酸化ストレスなどの外的刺激を受けた際にミトコンドリア内のcyclophilin D (CypD)が活性化されることによって起こる。またミトコンドリア傷害を受けた細胞は細胞死を起こし、最終的に尿路結石形成へと至る。そこでCypDの活性化を抑制するcyclosporine A (CsA)をモデル動物に投与しミトコンドリア傷害や尿路結石形成に関する評価を行った。 本研究では結石モデルラットを用いた。ラットをエチレングリコール(EG)自由飲水群とEG自由飲水+CsA胃管投与群の2群に分けて評価した。2群間において尿路結石形成量に明らかかつ統計学的に優位な差を認めた (0.99% vs 0.09%)。EG自由飲水群では腎臓に多数の尿路結石形成を認めたが、CsAを投与することによってその形成量は約10分の1にまで抑制された。また2群間の比較において、CsA投与群は酸化ストレスの発生やミトコンドリア傷害も抑制されていた。 つまりモデルラットにおいて、CsAを投与されることによりCypDの活性化が抑制され、その結果、腎尿細管細胞内の酸化ストレス発生も抑制され、最終的には細胞死と尿路結石形成も抑制されることが示された。 本研究は実験動物におけるものであるが、実験結果からCypDの活性化を抑制する薬剤は将来的に人の尿路結石を予防できる可能性があることが示されたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、(a) CypD活性化阻害薬による結石形成抑制効果、(b) ヒト検体におけるCypDと結石形成の関連性、(c) CypDをバイオマーカーとした結石予防法の有効性の3つの事案の検討を計画していた。現在のところは動物実験にて(a)が示されたと考えている。モデル動物としてはある程度確立された実験系であると考えるが、EGやCsAの至適投与量決定のためのプレリミナル実験に手間取ったこともあり、進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(b) ヒト検体におけるCypDと結石形成の関連性に関しては健常者と結石患者の尿中CypD排泄量をELISA法にて測定し、CypD排泄量と尿路結石の有無、結石成分、再発率との関連を検討する予定である。これによりCypDがヒトにおいて尿路結石形成時のバイオマーカーとなりうるかを明らかにしたいと思う。 (c) CypDをバイオマーカーとした結石予防法の有効性に関しては、飲水、食事指導、CypD活性化阻害薬といったヒトにおける結石予防法の有効性をバイオマーカーとして期待されるCypD排泄量の測定により定量的に検証したいと考えている。
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