研究実績の概要 |
転写因子であるNFκBは、癌の増殖、転移に重要な役割を持つことが知られている。我々はこれまで膀胱癌においてNFκBが細胞増殖および、抗癌剤耐性機序に寄与している可能性を報告してきた。ホルモン不応性前立腺癌患者に対しDocetaxelによる化学療法がおこなわれるが多くの患者において化学療法耐性となり治療困難となる。これまで我々の研究室ではタキサン系抗癌剤とNFκB阻害剤の併用療法が予後の改善につながる可能性を示してきている。今回応募者らは細胞増殖の機序の一つとしてFUSE binding protein(FBP)に注目した。本研究では前立腺癌増殖の機序としてFBPを介しc-myc, TNF発現が上昇していることを突き止め、FBPをノックアウトすることでc-myc, TNFを介したシグナリングが低下することで細胞増殖能が抑制されるか確認するしている。さらにはこのことが去勢抵抗性前立腺がんの抗癌剤への耐性の機序の一端を担っていると考えている。
本研究期間最終年度に薬剤の作用部位である箇所を特定してその部位に変異をもたらす細胞株を樹立した。薬剤の作用点の変異株においてFBP阻害剤の薬効を確認したがいまだ十分な結果は得られなかった。原因としてCovid19の蔓延によって薬剤供給が滞ったことと時間の十分な確保ができなかったことがあげられる。 本研究期間中に予定されていた研究は今後引き続き研究を行いたいと考えている。
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