研究課題/領域番号 |
18K09213
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
野宮 正範 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 医長 (00398348)
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研究分担者 |
吉田 正貴 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 副院長 (20201858)
西井 久枝 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 医師 (80506345)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膀胱虚血 / 下部尿路症状 / 前立腺肥大症 / 加齢 / 肉柱形成 / 線維化 |
研究実績の概要 |
膀胱の構造的変化(粘膜微小血管変化と肉柱形成)と下部尿路症状との関連性 【目的】高齢者下部尿路症状(LUTS)と膀胱虚血との関連が注目されているが、臨床的エビデンスは少ない。膀胱の粘膜微小血管変化と肉柱形成がLUTSに関連するか検討した。【対象と方法】尿路上皮癌術後の定期検査及び血尿・膀胱形態異常のため膀胱鏡検査を施行した61名、合計100回の保存映像とLUTSを解析した。粘膜微小血管の評価は、血管走行の変化を3段階(V1:分岐血管と微小血管を確認できる、V2:分岐血管を確認できるが微小血管が不明瞭、V3:分枝血管と微小血管ともに不明瞭)に分類し、肉柱形成も同様に3段階(T1:なし~膀胱壁の局所的な凹凸、T2:全体的な凹凸、T3:憩室様変化を伴う全体的な凹凸)に分けた。両分類のグレードとIPSS、年齢、前立腺肥大症合併、生活習慣病併存との関連性を検討した。統計解析は、One-way ANOVA(Bonferroni法)を用いた。【結果】患者背景は、平均年齢74.0歳(男性50名、女性11名)、前立腺肥大症合併32例、生活習慣病併存35例であった。膀胱の粘膜微小血管はV1群24例、V2群63例、V3群13例に、肉柱形成はT1群44例、T2群38例、T3群18例に分類された。IPSS合計点は、V1とV2群に比較しV3群で有意に高値であり、同様に、T1とT2群に比べT3群で有意に高値であった。前立腺肥大症の有無は、両分類のグレードと有意な関連性を認めた。生活習慣病併存有無は、両分類のグレードと関連性を認めなかった。年齢の平均値は、両分類のグレード上昇に伴い増加した。【まとめ】膀胱の粘膜微小血管変化及び肉柱形成は、加齢、前立腺肥大症合併の有無、LUTSと関連性を示した。加齢及び前立腺腫大は、膀胱の粘膜微小血管変化及び肉柱形成を招き、高齢者LUTSに関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢者下部尿路症状と膀胱血流障害(膀胱虚血)との関連性が注目されているが、膀胱虚血を反映する簡便で再現性のあるバイオマーカーや検査法は存在しない。我々は、膀胱の構造的変化(粘膜微小血管変化と肉柱形成)、膀胱粘膜血流測定、膀胱壁組織弾性の定量化を行い、高齢者下部尿路機能障害の病態解明と診断や治療効果判定に有用な評価法を探索している。 これまでの検討から、加齢に伴う膀胱の構造的変化(膀胱粘膜微小血管変化と肉柱形成)が、高齢者下部尿路症状の重症度と相関関係にあることが示された。しかし、膀胱粘膜微小血管変化と肉柱形成の評価は、肉眼的所見に基づいた分類であるため、より客観的に指数化できる膀胱粘膜血流測定と膀胱壁組織弾性定量化の検討を行っている。 膀胱粘膜血流測定は、予定通りに進捗している。膀胱壁組織弾性定量化は、超音波エラストグラフィを用いているが、膀胱の蓄尿量や腹壁の脂肪量など個々の条件によって影響を受けるため、再現性を高める工夫が必要と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
①本研究は、当施設の倫理・利益相反委員会で承認され、測定機器などの施設環境も整っている。 ②現在、症例数を重ねデータを蓄積している段階である。しかしながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響により、本研究の対象患者受診減少および生体検査数の削減が予想される。目標とする症例数に到達できるよう努力する。 ③膀胱壁組織弾性定量化に関して、再現性を高めるため、超音波装置技術者と相談し測定法の改良を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年2月以降の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、本研究の対象者となり得る患者さんの受診減少と生体検査数抑制ため、当該年に予定していた物品および消耗品購入の変更が生じた。また、様々な学会研究会が延期中止となり、旅費請求も当初の予定とは異なった。 本研究で使用する血流測定用プローブ(消耗品30万円)が破損し、現在、メーカーから代替のプローブを借用して研究を維持している。血流プローブ購入のための資金として運用する予定である。
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