研究課題/領域番号 |
18K09215
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
樋浦 仁 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (70451523)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ART / 先天性インプリンティング異常症 / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
近年、晩婚化の社会情勢に伴い、生殖補助医療(ART)が急速に普及してきた。しかし、同時にこれまで非常に稀であったゲノムインプリンティング(GI)異常症の発症頻度が増加していることが世界中で報告され、注目されている。本研究では、先天性GI異常症患児(ART群と非ART群)の末梢血DNAを用い、ゲノムワイドなメチル化解析により、メチル化異常のパターン分類と特徴について比較し、ARTによるリスク要因を評価する。本年度は、RRBS法によってBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)患児(ART群2検体、非ART群7検体)および自然妊娠健常児10検体の末梢血DNAメチロームデータを取得し、解析を行った。DNAメチル化解析は、ゲノムエレメント毎に解析を行い、自然妊娠健常児群のDNAメチル化平均より5%変動かつFDRが0.05未満の領域をDNAメチル化変動領域(DNA methylation variation: DMV)として抽出した。その後、DNVの数およびメチル化率について、ART群と非ART群を比較した。プロモーター領域、CpGアイランドおよびSINEなどの繰り返し配列のDMVの数は非ART群の方が多く、低メチル化されている領域が多かった。また、DMVはゲノム全体にランダムに分布していた。これらのDMVを生物学機能解析に供試したが、濃縮されたGO termはひとつも得られなかった。次に生殖細胞におけるメチル化パターンでDMVを分類した結果、ART群では精子でメチル化される領域が多かった。精子でメチル化されている領域は受精後の1細胞期で速やかに脱メチル化されるものが多いため、これらのDMVは脱メチル化を逃れたことが考えられた。すなわち、ART群のDMVは、受精操作または培養操作によって誘引された可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、RRBS法によってKCNQ1OT1:TTS-DMRが低メチル化状態であるBWS患者末梢血DNAメチロームデータを取得した。
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今後の研究の推進方策 |
DNAメチル化酵素(DNMT1, DNMT3A, DNMT3B, DNMT3L)と関連因子(MAT2A)の遺伝子変異 およびプロモーター領域のメチル化解析を行う。
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