研究課題/領域番号 |
18K09217
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
永瀬 智 山形大学, 医学部, 教授 (00292326)
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研究分担者 |
清野 学 山形大学, 医学部, 助教 (40594320)
太田 剛 山形大学, 医学部, 講師 (50375341)
榊 宏諭 山形大学, 医学部, 医員 (80744458)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / メタボローム解析 / 抗がん剤耐性 / xenograftモデル |
研究実績の概要 |
本研究では、第一に実臨床に即したマウス卵巣癌再発モデルを確立する。第二に遺伝子や蛋白質発現のさらに下流にある、酵素などによって作り出された細胞内の低分子化合物群(メタボローム)に着目し、再発卵巣癌組織のメタボロームプロファイルを解析することで抗癌剤耐性に関連する代謝経路および代謝因子を明らかにする。第三にそれらの代謝因子の阻害剤、あるいは賦活剤を用いて抗腫瘍効果を検証し、最終的に再発卵巣癌の薬剤耐性を克服する新規治療法の開発を目指す。 本年度は第一の目的であるマウス卵巣癌再発モデルを確立するため、癌患者由来の組織をマウスに移植するpatient-derived xenograft (PDX)を行った。倫理委員会承認後、同意を得られた卵巣癌患者の腫瘍から腫瘍組織を摘出した。腫瘍は摘出後30分以内に処理を行った。腫瘍は滅菌PBSで2回洗浄後、ハサミで細片し、トリプシンで37度30分反応させて75μmフィルターを通し細胞を回収した。次に、赤血球をred blood cell lysis solutionを用い除去し、回収した腫瘍細胞を6~8週齢メスヌードマウス(BALB/c nu/nu)の皮下に移植した。5症例施行し5 x 106~2 x 107個の生細胞を移植したが、8か月間の観察で腫瘍形成を認めなった。 前述の手技での卵巣癌細胞の皮下移植では腫瘍が形成されにくい可能性が高いことから、並行して腹腔内移植モデルの作成を試みている。また、腫瘍形成を促進するため、これまで腫瘍細胞をPBSで希釈して移植していたが、PBSではなくマトリゲルを使用する、あるいは、より免疫寛容のあるSCIDマウスを用いるなどの方法を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者検体を使用するための準備状況は整っているが、研究の第一段階であるPDXの樹立が難航している。ただし、PDX樹立後のマウスに対する抗がん剤の投与や麻酔下での手術手技、検体採取後のメタボローム解析には精通しており、PDXの樹立ができればその後の研究は順調に進むと考えられる。 また、我々はメタボローム解析によって絞り込んだ抗がん剤耐性に関連する候補代謝産物の代謝合成阻害剤あるいは代謝賦活剤の抗腫瘍効果を定量的に測定するため蛍光色素で標識した癌細胞を作製することを予定している。現在卵巣癌細胞株に蛍光発色機能を持ったベクターを導入し、マウスに接種、腫瘍形成後、ルシフェリンを投与して腫瘍形成を定量的に判定できるかの予備実験を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
PDXの樹立と再発卵巣癌モデル確立に重点を置いて実験を行う。PDXの樹立が難しいことは実験系を計画した時点でも予想されたことであり、今後は、①癌細胞接種時の溶媒をマトリゲルに変更する、②マウスをSCIDマウスに変更する、③患者検体が理想ではあるが、卵巣癌細胞株を用いてPDXの樹立を行うなどの方策を行い、次の段階であるメタボローム解析に進んで行きたい。 さらに、メタボローム解析によって同定した薬剤耐性に関連する代謝経路・代謝因子を制御する遺伝子の発現を臨床検体で確認することを予定しており、現在卵巣癌患者の病理検体を収集し、レーザーマイクロダイセクション法の準備を行っている。後方視的にTC療法の効果について良好群と不良群にわけ、両群における発現の相違を解析し、TC療法の効果予測因子となりうるか、予後因子となりうるかどうかなどバイオマーカーへの応用可能性についても検証を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
卵巣がん患者由来のxenograftモデル確立が難航しており当初の計画より遅れているため、初年度の研究計画に組み込まれていたXenograft検体を用いたメタボローム解析が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。現在、癌細胞接種時の溶媒の変更、SCIDマウスへの変更などを行い、2019年度は、xenograftモデルに抗がん剤を投与し、投与前と投与後の献体を用いてメタボローム解析を実施する予定である。同時に、xenograftモデルが計画通りに進まなかった場合に備えて、卵巣癌細胞株による準備も行っている。抗癌剤投与による抗腫瘍効果を定量的に測定するための蛍光色素で標識した卵巣癌細胞株を作製しており、マウスに接種した後の腫瘍形成の評価に関する予備実験をすすめている。
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