研究課題
2020年度は2019年度に続き、羊水を添加した妊娠後期の母体血漿においてAPC-srおよび内因性トロンビン産性能を検討した。対象は抗血小板薬、抗凝固薬の内服、血小板や血液凝固異常に関連する合併症をもつ症例を除外した妊娠後期51例とした。年齢33 (4.0)歳、うち初産婦15例、BMI 26.6 (4.6) kg/m2、妊娠週数264 (7.2)日、血小板数24.9 (6.9)万/μLであった。使用したクエン酸血漿は、PT-INR 0.91 (0.05)、フィブリノゲン 441 (64) mg/dL、プロテインS (PS):10.9 (3.40) g/mL、第V因子 (FV):1.51 (0.75) g/mL、および第VIII因子 (FVIII):1.69 (0.80) g/mLであった。同量の羊水を用いた各ペア間の比較において、ETPはすべてAPCの添加後に有意に減少した。APCを添加した群間の比較では、羊水を混合するとETPが有意に増加し、APC-srは添加した羊水量に応じて有意に増加した。本研究により、妊娠後期の母体血漿中のAPCに対する感受性が羊水添加により有意に低下したことを初めて示された。羊水の添加によるAPC抗凝固機能低下は羊水のトロンビン産生量増加作用や血小板活性化機能に加えて母体血液凝固機能の亢進に一部影響している可能性がある。本研究でAPC-srに観察された最も顕著な差は、羊水混合なしと8μLの羊水を混合した群に平均値で約1の差であった。妊娠後期妊婦の血漿に羊水を添加することでAPCによる抗凝固機能が阻害され、これが凝固亢進を促進し、分娩後早期の肺血栓塞栓症に類似する心肺虚脱型の羊水塞栓症の発症に関連する可能性があることを示した。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
PLOS ONE
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