研究課題
良性疾患に対する手術により摘出した卵巣漿液性嚢胞腺腫の細胞を初代培養した。卵巣漿液性嚢胞腺腫細胞から上皮成分だけを分離し、cyclinD1、CDK4、hTERTの遺伝子導入をレンチウイルスベクターにて行った。不死化卵巣漿液性嚢胞腺腫細胞(HOVcyst1)の非腫瘍形成能を確かめるためにソフトアガーアッセイ、ヌードマウスへの皮下注投与を行った。また、日本人の卵巣低異型度漿液性癌、卵巣漿液性境界悪性腫瘍の発癌ドライバー遺伝子の解析を行い、HOVcyst1に導入する遺伝子の検討を行った。卵巣漿液性嚢胞腺腫細胞へのcyclinD1、CDK4、hTERTの遺伝子導入の結果、senescenceが誘導されることなく、恒常的な細胞培養が可能であることを確認した。また、日本人の卵巣低異型度漿液性癌/境界悪性腫瘍はPIK3CAの変異頻度が60%と高く、BRAF変異が20%、ERBB2の変異が30%に認められた。一方、欧米人ではKRAS変異が高いことが報告されている。そのため、HOVcyst1には変異型PIK3CAおよび変異型KRASを遺伝子導入することにした。ヌードマウスへの皮下注投与ではHOVcyst1は腫瘍形成しなかった。HOVcyst1への変異型PIK3CA、変異型KRASのそれぞれの単独導入ではヌードマウスで腫瘍形成は見られなかった。しかし、両者を導入したHOVcyst1は腫瘍形成がみられ、病理組織学的検討では、ヒト卵巣低位型度漿液性癌に非常に類似した組織学的所見を認めた。HOVcyst1への変異型PIK3CAおよび変異型KRAS の遺伝子導入により卵巣低異型度漿液性癌のin vitro発癌モデル構築に成功した。卵巣低異型度漿液性癌の発癌経路としてPIK3CA/AKT/mTORおよびKRAS/BRAF/ERK経路の双方の活性化が必要であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
HOVcyst1への変異型PIK3CAおよび変異型KRAS の遺伝子導入により卵巣低異型度漿液性癌のin vitro発癌モデル構築に成功した。
LGSC in vitro発癌モデルを用いた発癌過程での代謝変化の同定上記発癌モデル細胞を用いて、発癌初期における糖代謝亢進、乳酸産生増加等の代謝制御機構の変化をTMRMアッセイ(ミトコンドリア機能評価)、NBDGアッセイ(グルコース取り込み評価)にて、各Driver geneを導入した細胞間で代謝系の相違を検討する。
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