研究課題/領域番号 |
18K09232
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
金子 政時 宮崎大学, 医学部, 教授 (40264387)
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研究分担者 |
鮫島 浩 宮崎大学, 医学部, 教授 (50274775)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サイトメガロウイルス / 胎内感染 / 周産期 / ウイルス感染 |
研究実績の概要 |
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症のリスク因子のひとつは、母体の妊娠中の初感染である。CMV IgG avidity index (AI)は、感染初期のIgG抗体が抗原と結合する力が弱く、尿素処理によって容易に結合が解けてしまう原理を応用して測定されるものである。すなわち、感染初期のIgG AIは低値を示すことになる。そこで、胎内CMV感染のハイリスク群を抽出するために、母体のCMV IgGとIgM測定後に母体CMV IgM陽性症例にCMV IgG AIを測定する方法が提唱されている。しかしながら、この方法ではIgG AIが時間の経過と伴に上昇するために適切な時期に測定しないとハイリスク抽出の感度が低下することが考えられる。また、IgG AIのカットオフ値の設定についても問題が残っている。また、妊娠中の母体がCMVに感染する経路として、乳幼児からの感染が最も重要視されている。すなわち、乳幼児との接触が先天性CMV感染のリスクとなることを意味し、乳幼児を育児中の母親や乳幼児をケアする職業の保育士や看護師はCMV感染のリスクを持つことになる。 そこで、CMV IgM、IgG、IgG AIを同時に測定するために、CMV IgG、IgM測定用の血清を保存し、IgM陽性判明後に保存された血清を利用してIgG AIを測定する。同時にIgG、IgMが測定された妊娠週数、CMV IgG値、妊婦の職業、年齢、経産回数、妊娠初期の症状、胎児超音波所見に関する情報を収集する。CMV IgM、IgG、IgG AIを同時に測定することによる胎内CMV感染のハイリスク群抽出法の有用性および他のリスク因子を加えることによりスクリーニングの精度を上げることが可能かを明らかにすることを目的として症例の集積を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宮崎県内でCMV IgGとIgMを使用して妊婦CMVスクリーニングを行っている3つの産婦人科1次施設(年間総分娩数約1000件)の協力を得て研究を行っている。同施設から2018年にCMV IgM陽性のために外来紹介を受け、その内81件が分娩を終了した。この件数は、当初想定していた50件を超えていた。研究計画に従いIgGおよびIgMを測定した81検体の血清を回収し、IgG AIの測定を行った。同時にIgG、IgMが測定された妊娠週数、CMV IgG値、妊婦の職業、年齢、経産回数、妊娠初期の症状、胎児超音波所見に関する情報を収集した。81例に対して、新生児尿もしくは羊水を利用してCMV PCR検査を行い2例が胎内CMV感染症と診断した。2例の胎内CMV感染例のIgG、IgM、IgG AIは妊娠12週に測定されていた(case 1; IgG 7.9, IgM 4.61, IgG AI 9.7、case 2; IgG 15.2, IgM 5.59, IgG AI 6.6)。2例とも1経産の妊婦で、職業は保育士や看護師ではなかった。2例は、low IgG AI、1経産という胎内感染のリスクを持っていた。全体で13例の IgG AI 35%未満の症例があり、その内2例が胎内CMV感染例であった。13例中11例が経産婦、3例が職業的リスクを持っていた。13例中8例は妊娠前の抗体保有状況は不明であったが、5例は抗体未保有であった。13例のCMV IgGは8.61±3.31、CMV IgMは3.91±2.37、IgG AIは24.32±9.77であった。 本研究から得られた副次的な結果として、CMV IgM陽性と判定された妊婦の不安度が高いことを明らかにして論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年に登録された症例の内、81例が分娩を終了したが、一層の症例の集積を図ることが重要なポイントとなる。そこで、2019年も引き続き宮崎県内の3つの産科医療1次施設の協力を得て症例の集積を図っていくが、症例を更に蓄積するために研究に協力してもらえる産科医療施設を増やす予定である(既に2施設増加済み)。さらに、過去10年の間に集積された症例の情報を加えるために、過去の情報の再チェックを行う予定である。これらの作業により2019年末までに約300例にCMV IgM症例を集積することを見込んでいる。2019年度末から症例の分析を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費に関しては、当初予定していた通りに経費を使用でき、研究成果を得る事ができた。一方で、当該年度に予定していた学術集会に関する旅費が他の経費によって賄うことができたために、この経費を次年度に充てることとした。次年度は、当該年度より多くの検体を収集する予定のため、この検体のIgG値およびPCR値を測定するための物品費として経費を充てる予定である。
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