妊婦サイトメガロウイルス(CMV)抗体スクリーニングは、抗体陰性者をみつけ衛生指導を行う事により、先天性CMV感染症の発生を予防できる可能性がある。しかしながら、同時にCMV IgM陽性者を抽出することになる。我々の検討では、CMV IgM陽性妊婦の不安度は、IgM陰性者の不安度と比較して有意に高いことが判った。この結果から妊婦抗体スクリーニングを実施する際の妊婦メンタルヘルスサポート体制充実の必要性を示した。 IgM陽性妊婦から初感染者を抽出する方法としてIgG avidity Index (AI)を測定する方法がある。しかしながら、IgG AIは感染からの時間経過と伴に上昇するために、測定された妊娠時期によっては初感染者を抽出できなくなる。この点において、我々の検討では、妊娠14週以下でのIgG AI測定の有益性を示すことができた。 さらに、IgG AI測定は限られた施設のみで測定が可能である。従って、CMV IgM陽性と判定されても初感染妊婦を同定できず、妊婦に不安のみを与えることになる。そこで、2項ロジスティクス解析を行い、CMV IgMと妊娠回数からIgG AIの高いあるいは低いを予測する数理モデル式を開発した。このモデル式は、IgM陽性妊婦の大部分を占めるhigh IgG AIを予測することに優れている。そのため、IgG AIの結果を待つことなく、妊婦へのカウンセリングが可能となり、妊婦メンタルヘルスに大きく寄与するものであると考えられる。今後は、この数理モデル式の有効性を前方視的に検討する必要がある。また、IgG AI低値と判定された場合には、羊水穿刺という侵襲的な方法で胎内感染を確定する必要があるため、この方法に替わる非侵襲的な方法を模索する必要がある。
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