研究課題
妊娠マウスにオキシトシン負荷を行い、出生仔の脳障害の発現の有無とその原因および表現型について確認するための脳障害モデルの作成を行うことを今年度の目標とした。C57BL/6J wild typeの妊娠18.5日目の雌性マウスにPBS(対照群)と各濃度(0.6, 1.2, 6, 30μg/day)のオキシトシンを充填した浸透圧ポンプを皮下に埋め込み、分娩誘発マウスを作成した。このマウスで薬物投与開始から分娩までの時間、生存新生仔数を比較した。オキシトシン(濃度:6μg/day)群では6-12時間以内に、PBS群では12-24時間以内に分娩となり、有意にオキシトシン群で分娩までの時間が短縮した。この群の出生後24時間で生存している新生仔マウスの個体数を確認したが、有意差を認めなかった(p=0.12)。生存していた新生仔マウスを安楽死させたのち、脳を摘出し、各部所の切片を作成し、前頭前野および脳梁に対して、神経細胞を同定するためにNissl染色を、アポトーシスを確認するためにTUNEL染色を実施した。オキシトシン(濃度:6μg/day)群において前頭前野内の前辺縁皮質(prelimbic prefrontal cortex: PL)および下辺縁皮質(Infralimbic cortex : IL)領域で核濃縮を伴う細胞が対照群より多く(P<0.01)、脳梁小鉗子(Forceps occipitalis major: fmi)の領域でTUNEL陽性細胞数が明らかに多くみられた(P<0.01)。さらに同部位の免疫染色にて、Iba-1陽性細胞がオキシトシン(濃度:6μg/day)群において著名に増加し(P<0.05)、電子顕微鏡における観察においても、ミクログリアによる死細胞の貪食像を多数認めた。死細胞およびミクログリアの増加したこれらの領域は、自閉症スペクトラム障害と関連する領域とされており、オキシトシンによる分娩誘発と自閉症スペクトラム障害との関連が示唆される。
3: やや遅れている
先行研究の結果を一部再現できなかったことにより分娩誘発マウスの作成に時間を要したため。
論文投稿を行いながら、必要な追加実験を行なっていく。
先行研究の結果が一部再現できなかったことにより、分娩誘発マウス作成に時間を要し、一昨年度の研究進捗が遅れたため。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Obstetrics and Gynaecology Research
巻: 141(46) ページ: 66-78
10.11111/jog.14149