研究課題/領域番号 |
18K09239
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
桑原 慶充 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40373013)
|
研究分担者 |
片山 映 日本医科大学, 医学部, 助教 (10333113)
竹下 俊行 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (60188175)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 頸管リモデリング / 早産予防 / 無菌性炎症応答 / プロゲステロン |
研究実績の概要 |
子宮頸管における無菌性炎症応答とプロゲステロンによる制御系の破綻により誘導される早産病態メカニズムの検証を目指して以下の検討を行った。 ①無菌性炎症応答に関与する内因性リガンドの探索:頸管組織にも存在する代表的なAlarminであるHMGB1を各種濃度で子宮頸部線維芽細胞(UCFs)培養系に添加したところ、推定される生理的濃度では炎症応答は惹起されず、他の内因性リガンドの探索が必要と考えられた。Alarminの細胞外放出は、組織損傷などによる受動的な漏出以外に、炎症刺激による能動的な産生が報告されている。UCFs培養におけるLPS誘導性の炎症誘導性分子のうち、プロゲステロンによって発現が抑制されるリガンドをRNA シークエンス法を用いてグローバルに解析すると、先行研究で報告した分子群(IL-6, IL-8, PTGS2, CXCL11等)に加え、Alarminとして報告されている炎症メディエーターが新規に同定された。この分子の発現は頸管組織においてプロゲステロン作用で制御されている可能性が示唆され、無菌性炎症応答に関与する内因性リガンド候補と位置付けた。 ②無菌性炎症と拮抗するプロゲステロン標的分子の探索:頸管熟化機構において、炎症応答と呼応したプロゲステロン作用の減弱が推定される。そこで、RNAシークエンス法のデータより、プロゲステロン単独投与で著明に発現誘導され、LPS添加によって抑制される分子群を抽出した。さらにハンドサーチにより、炎症応答カスケードに抑制的に作用するシグナル分子を同定した。この分子はプロゲステロンシグナルの標的として頸管組織における潜在性無菌性炎症と拮抗している可能性が示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNAseqを用いたゲノムワイドな探索により、無菌性炎症応答の内因性リガンドと、プロゲステロンシグナルで誘導される制御系分子の候補を絞り込み、今後の研究展開の具体的な方向性が定まった。
|
今後の研究の推進方策 |
無菌性炎症への関与が示唆された内因性リガンドおよびその受容体のヒト頸管組織における発現・局在を免疫組織化学染色で明らかにする。さらにUCFs培養系を用いて以下の検討を行う。①リガンド添加によって誘導される炎症応答の特徴、プロゲステロン作用の影響、および外因性リガンドとの相乗作用について解析する。②発現誘導や機能変化に対するメカノストレスの影響について検証する。③制御因子と推定されるプロゲステロン標的分子の役割について、特異的阻害剤やsiRNAを用いて検証する。④炎症応答性の転写因子ならびにプロゲステロン受容体の標的遺伝子へのリクルートメント、転写活性化と相関する修飾ヒストンの局在についてChIPシークエンス法を用いて全ゲノムスケールで評価し、無菌性炎症応答に拮抗するプロゲステロンの作用機構を明らかにする
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の効率化を企図し、当該年度はRNAシーケンス解析による標的分子の絞り込みを行った。当該年度に予定していた発現・局在解析は翌年度に行う事となり、計上していた消耗品分を合わせて請求した。
|