研究課題
妊産婦死亡は、直接産科的死亡が半数以上を占めていたが、年々減少傾向にあり、2021年には初めて間接産科的死亡が上回った。その要因としては近年の産科危機的出血の割合減少が大きかった。しかし、ここ3年の再増加が問題となっている。わが国の妊産婦死亡の解析数は558例で、死亡率に年次変化はなく中央値4.3(3.9-6.0)/10万分娩で、産科危機的出血による死亡の割合は2010年29%から漸減し、2019年に7%なった後漸増し、2022年は18%であった。近年の多い原因は、弛緩出血、早剥、子宮型羊水塞栓症など一旦減った原因の再増加と、子宮破裂、癒着胎盤であった。日々の日常臨床における産科危機的出血に対する予防、施設での初期対応などの再考を要する例も少なくないが、生殖補助医療による妊娠の増加から、子宮破裂や癒着胎盤といった対処の難しい場合の超音波診断、治療戦略などが重要であると考えられた。死亡例の中には超音波検査が施行されていれば救命できた可能性のある例もしばしばあった。国際疾病分類の妊産婦死亡分類(ICD-MM)の、Group 1 (異常妊娠例)の80%、Group 2の肝被膜下出血の67%、Group 3(産科危機的出血)の子宮破裂の67%、早剥の10%、癒着胎盤の13%、子宮内反の75%、Group 5 (心大血管疾患)の周産期心筋症の43%は救命に寄与した可能性があった。これらのことを念頭に、新しい超音波組織診断を広めていきたい。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件)
J Obstet Gynaecol Res.
巻: 49 ページ: 2252-2266
10.1111/jog.15721