研究課題/領域番号 |
18K09243
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
山田 秀和 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (10254012)
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研究分担者 |
田沼 延公 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 主任研究員 (40333645)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 卵巣がん / 代謝 / BRCA |
研究実績の概要 |
卵巣がんの代謝特性を解明し、新規治療標的として開発することを目的として研究を行った。特に、近年PARP阻害がBRCA1/2変異がんに対する治療において成果を上げているが、その標的であるPARPがNAD依存的酵素であることから、卵巣がんにおけるNAD合成経路について、検討を行った。 培養系での検討にて、広範囲の卵巣がん細胞株に対し、NAD合成阻害剤が著しい増殖抑制効果を示すことが分かった。LDHリリースやcaspase3/7活性化を指標とした検討により、NAD合成阻害が、卵巣がん細胞にネクローシスとアポトーシスの両方あるいは片方のみ(細胞株毎の違いが大きい)を誘導することが分かった。予想に反して、BRCA変異細胞株の方が、NAD合成阻害に対する感受性が低いことが分かった。遺伝子発現解析の結果から、BRCA変異がんのNAD合成阻害低感受性と対応する可能性がある、いくつかの候補遺伝子を抽出することができた。また、BRCA変異をもたない卵巣がん細胞株では、NAD合成阻害によって、細胞の乳酸産生が著しく減少する一方、BRCA変異株ではそのような変化はみとめられず、上記代謝干渉への感受性との相関がみとめられた。経時的メタボローム解析によって、NAD合成阻害にともなって変動する代謝物を同定した。意外なことに、NAD合成を阻害しても、細胞のエネルギー状態(ATP量やAMPKの活性)に影響が現れるのは、一部の卵巣がん細胞株に限られていた。むしろ、新規タンパク質の翻訳が強く抑制されていることが示唆されており、そのような応答によって恒常性維持を図っている可能性が考えられた。新規NAD合成阻害剤を取得することができ、マウス移植モデルにて、その治療効果の検証に取り掛かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BRCA変異細胞株の方がNAD合成阻害に対する感受性が低いというのは予想外だったが、新規阻害剤の取得や作用機序の検討が順調だったことなどを総合し、上記評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に引き続き、マウス移植モデルでの解析を中心に、NAD阻害剤による卵巣がん治療効果や作用メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
・消耗品費が当初想定よりも僅かに少なくすんだため ・次年度の消耗品費に上積みし、より迅速な計画進捗をねらう。
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